フラ(hula)はハワイの伝統的な民族舞踊ですが、起源や歴史についてよく知らないという人も多いのではないでしょうか。ハワイでは、観光客を中心に本場のフラを見られるショーが人気です。日本でも映画がきっかけとなってフラの知名度が上がり、各地でレッスンや競技会が開催されるなど身近な存在となっています。この記事では、フラの起源や特徴と、実際にハワイのフラを体験できるオプショナルツアーについても紹介します。
フラは古来、神にささげる神聖な儀式のひとつ。日本ではフラダンスと呼ばれることがありますが、フラにも踊りという意味があるため、フラダンスではなく「フラ」というのが正しい呼び方です。それでは、フラの起源や特徴を詳しく見ていきましょう。
「フラ」とは、ハワイの先住民族が大切にしてきた伝統芸能です。フラの起源は諸説あるため、はっきりとは分かっていませんが、一節では森の守護神でもある女神「ラカ」がモロカイ島で踊ったのが始まりといわれています。
ハワイの人々は、あらゆるものに精霊が宿っていると考え、文字がなかった時代に神々への感謝の思いをフラで表現していました。またハワイには、「メレ」というハワイアンソングの原型とされる「チャント(詠唱)・歌」が伝わっていますが、これに踊りを伴うものを「メレ・フラ」といいます。メレは祈祷や神話の伝承のために生まれた表現手段です。メレの意味をフラで表現し、メレと合わせることで、よりスピリチュアルな意味合いが強まるといわれています。
ハワイの人々は、自然の美しさや身の回りで起こった出来事についてもフラで表現していました。今はエンターテイメント的な印象がありますが、ハワイアンにとっては古くから宗教儀式で用いられ、歴史的にも重要な意味を持つ踊りなのです。
このようにはるか昔からハワイアンの生活に密接に関係してきたフラですが、消えてしまうかもしれないという危機を迎えたことがあります。それは、ハワイ王朝が成立した時代にさかのぼります。
1778年にイギリスの探検家クック船長が、オアフ島、次いでカウアイ島へと渡ってきます。クックがハワイをサンドイッチ諸島と命名した頃、カメハメハ大王がハワイ全島を統一してハワイ王朝が成立します。カメハメハ大王の没後、1820年頃になるとアメリカから宣教師が訪れて布教活動が始まり、キリスト教が普及していきました。
自然を拝めるフラを布教の妨げになると考えた宣教師らの訴えにより、カメハメハ2世はハワイ全土に禁止令を出します。この出来事をきっかけに、ハワイでフラを目にすることはなくなりました。しかし、ハワイには伝統を言葉で伝える文化があり、フラもひそかに口承されていたのです。表舞台から姿を消したものの、フラはハワイの一部の人々によって大切に守られていきました。
約50年後、フラは、ハワイ王国7代目の王「デイヴィッド・カラカウア」の手により表舞台に返り咲きます。芸術の分野に関心があった王は伝統的なハワイの文化をこよなく愛しており、長い間封印されていたフラを、自分の即位式のときに躍らせたのです。
王が公の場で専属のダンサーによるフラを披露すると、王族の間でもフラが徐々に広まり、復活へと流れが大きく変わります。それから時を経て、1970年代になるとハワイの伝統的な文化を復活させる「ハワイアン・ルネッサンス運動」が起こります。このとき改めてフラの魅力が人々に見直されました。以降、各地でさまざまなフェスティバルが催され、フラを親しみ、愛する人々に受け継がれています。
フラはステップと腕の動きの組み合わせで表現される踊りです。性別年齢問わず幅広い人々が踊ることができるのも魅力のひとつ。フラには、「カヒコ」と呼ばれる古典的で宗教的な意味を持つフラと、「アウアナ」と呼ばれる自由で現代的なフラがあります。ハワイアンフラショーなどでよく見られるのは、後者のフラ・アウアナです。また、地域によっても表現の仕方に違いがあるそうで、ひとことでフラといっても実に奥深いものがあります。
ハワイでは観光客を出迎えてくれるフラのショーが、ビーチやホテルなどさまざまなところで開かれています。ここでは特におすすめのショースポットについて紹介します。
オアフ島のホノルル(Honolulu)でフラショーを見ることができる場所はいくつかありますが、その中でもメディアにも取り上げられ、知名度の高い場所は「クヒオビーチ」です。クヒオビーチでは無料のフラショーを楽しむことができます。
クヒオビーチのフラショーはホノルル市が主催しており、フラを習う生徒がショーの主役です。子どもが踊るケイキフラや、女性だけでなく男性のパフォーマンスも楽しむことができます。1時間ほどのショーですが、古典フラから現代のフラまで本格的なパフォーマンスが生で見られるのが魅力です。タイミングが合えばサンセットとフラのコラボレーションを見ることができます。日によって踊り手が変わり、何度見ても飽きずに観賞できるでしょう。
クヒオビーチの場所はすぐ近くにある5つ星ホテルのハイアットリージェンシーが目印です。 ステージ近くには、サーフィンの父として知られ、ハワイの親善大使も務めたデューク・カハナモクの像があります。初めて訪れる人はその場所を目指してみるとよいでしょう。開催日時は天候によっても左右されるため事前にチェックしておくことをおすすめします。
夕方の開演時間にはステージ周辺に人々が多く集まります。大きなバニアンツリーの前のビーチ・フラ・マウンドがステージとなり、トーチに火が灯ります。観客席はなく芝生にシートなどを敷いて座るスタイルですが、あっという間に場所が埋まってしまうこともあるため、ステージ近くで楽しみたいという人は早めの時間帯に訪れておくのがおすすめです。なお、観客が座る場所では飲食をする人はあまりいないため、食事などはショーの前後にしましょう。
ちなみにクヒオビーチは、実在の王子に由来するビーチです。クヒオ王子はハワイ王国時代の王子で、王国が崩壊した後もハワイの擁護活動に貢献した人物として知られています。ワイキキビーチの一部は彼の所有地でありましたが、没後ホノルル市のものとなりました。ハワイの功労者であるクヒオ王子の名はビーチの名前として残され、後世に受け継がれています。
クヒオビーチのほかにも、ロイヤルハワイアンセンター、アラモアナセンター、ワイキキビーチウォーク、インターナショナルマーケットプレイスなどでも無料のフラショーが行われています。
食事つきのルアウ(宴)も人気です。有料ですが、レイによる歓迎に始まり、ビュッフェスタイルの食事やフラを含むポリネシアン文化を満喫できるショーが賑やかに繰り広げられます。シェラトン・ワイキキなどのホテルで開催されているので、ぜひ体験してみてください。
現地で本場のパフォーマンスを楽しむことができるフラショーやルアウは、チェックしておきたいイベントのひとつ。ハワイの人々の文化に触れる、よい機会になりますよ。
ハワイ旅行の際は、ぜひ本場のフラを楽しんでみることをおすすめします。ベルトラでは、本場のフラショーを見られるツアーや、フラの師範「クムフラ」によるフラレッスンを体験できるオプショナルツアーなどを豊富に用意しています。現地でレッスンを受ければよい思い出になるはず。ハワイの人々がフラを通して、何を表現しようとしているのかを考えながら鑑賞するひとときもよいものですよ。
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