イタリアに訪れたら存分に楽しみたいものいえばやはり食事とワイン!今回は、旅行に行ったらイタリア人が嗜むワインを楽しみたい方、家にいても本場の味を再現したいという方に役立つイタリアワイン事情を紹介します。飲みやすくなるワインの味わい方や食事との合わせ方、現地で購入できるおすすめワイン情報もあるので、最後までお見逃しなく!
イタリアのどこの街を歩いてもよく目にするのが、バール【Bar】やカフェテリアです。朝食やランチ、夜のちょっとしたお酒まで様々な用途で立ち寄る場所であり、イタリア人には欠かせない憩いの場でもあります。そしてバール、カフェテリアではイタリア独自の風習である「アペリティーボ」という食事があります。今回はこのアペリティーボとヴェネチア独自の居酒屋である「バーカロ」、イタリアの食習慣について紹介していきます。
「アペリティフ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。フランス語や英語で食前酒を意味するものであり、イタリア語では「アペリティーボ【Aperitivo】」と呼ばれています。しかしイタリアでは、食前酒という直接的な意味ではなく、夕食前の軽食とお酒を飲み語らう習慣のことを指しており、ミラノ発祥の文化です。イタリアでの夕食時間は20時以降が一般的であり、夕方から夕食までの時間がアペリティーボタイムとなります。スローフードという言葉が生まれるほど、イタリアでは食事の時間がとても重要とされているため、夕方以降はゆったりと段階を分けて食事を堪能する、いかにもイタリアらしい文化なのです。
アペリティーボは約7~15ユーロで1杯のドリンクを頼むとおつまみがついてくるスタイルで、おつまみはビュッフェ形式や盛り合わせとなります。そしてそのおつまみは、本場イタリアの味を存分に楽しめる料理で食べ放題のところもあるなど、この値段でこんなに食べられるの?という驚きのコスパなのです(お店によってはポテトチップスのみなどもあるのでご注意を)。満足に食べられることもできるため、夕食として利用されることもあることから「アペリチェーナ(チェーナ=夕食)」と呼ばれることもあります。
アペリティーボでは軽めのお酒が好んでよく飲まれ、ワインはスパーリングワインのプロセッコ、カクテルはイタリアのリキュールであるアペロールやカンパリを使用したスプリッツ、またはビールなどが主流です。
なお、アペリティーボは南の方へ行くとお昼からやっていたりと、地域によって時間帯やおつまみスタイルが異なります。都市を周遊する場合は、ぜひ各地のアペリティーボを体験してみてください。
バーカロはヴェネチア独自の立ち飲み居酒屋です。朝からオンブロ(ヴェネチアでのハウスワインの呼び名)を飲む人もいるほど地元民の生活の一部であり、価格も良心的なところが多いです。アドリア海で獲れた海の幸のフリットと一緒にワインを嗜めば、地元民の仲間入り!さくっと飲めるので、バーカロではしご飲みをしても楽しいですね。
イタリアでは、食事のときにワインだけでなくお水やコーヒーもよく頼まれます。そこで現地でも役立つ、嗜まれる飲み方を紹介します。
ヨーロッパでは、ワインに炭酸水を入れる飲み方があります。イタリアではお店のメニューであまり見かけませんが、家でも毎日のようにワインを飲むので、味を変えたいときに炭酸水で割ります。この場合ワインはフルーティで渋みが少ないもの、そしてワインの味を壊さないように炭酸水は微炭酸のものを1対1の割合で入れます。またヨーロッパの水は硬水のため、日本で試す場合は軟水ではなくゲロルシュタイナーやサンペレグリノなどの硬水がおすすめです。
イタリアでの食事に欠かせないものがコーヒー、すなわちエスプレッソです。イタリア人は朝こそカプチーノを飲むことが多いとされていますが、ランチのあとや3時のおやつ、ディナーの締めにエスプレッソというように、1日に何回もエスプレッソを摂取するのが根強い文化として残っています。つい最近まで、かの有名なコーヒーチェーン店のスターバックスが1店も出店していなかったほど、イタリア人はエスプレッソにこだわりと誇りを持っています。
エスプレッソと聞くと苦そうなイメージがありますが、エスプレッソは無糖ではなく砂糖を入れて飲むのが一般的であり、南の地域に行けば行くほど甘くなるといわれています。そして日常的に飲まれるため、バールでは1~2ユーロで飲めるところがほとんど。イタリアで食事する際は、ぜひイタリア人にならってエスプレッソも挑戦してみてください。
ちなみにカプチーノを飲むのは朝だけ、というのが一般的であり、夕食後に頼むことはほとんどないため、夕食後にコーヒーを頼む場合はエスプレッソがおすすめです。
ワインと料理がベストマッチしていることを「マリアージュ」と呼び、これはフランス語で結婚を意味します。
イタリアワインのマリアージュの基本は、同じ産地で造られたものです。ピエモンテ州で作られた食材にはピエモンテ州のワインを、シチリア島で獲れた魚にはシチリア島で造られたワインを、ということです。このマリアージュを基本に、イタリアワインでおすすめのマリアージュを紹介します。家でも試せるものがあればぜひチャレンジしてみてください!
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ【Bistecca alla Fiorentina】はいわゆるTボーンステーキで、希少なイタリア産キアニーナ牛を使用したフィレンツェの郷土料理です。ステーキといっても脂身より赤身が多く、またレアで焼き上げるため、さっぱりとした味わいの中に肉の旨味が凝縮されています。ここでのマリアージュは同じトスカーナ州が産地の、爽やかな酸味と果実味たっぷりのキャンティワインが特に合います。
白トリュフとバローロは共にピエモンテ州が産地ですが、バローロの産地のすぐ近くで白トリュフは栽培されており、また同じ時期に収穫されるため、同じ土壌・時期に育ったこの2つは最高のマリアージュといわれています。白トリュフ自体は高価でなかなか手に入らないものですが、オイルならイタリア現地ではもちろん、日本でも入手可能なので、白トリュフオイルで代用して料理に使用するのもおすすめです。その他にもピエモンテ州では野鳥やジビエも獲れるため、鹿肉のローストなどもよく合います。
カンパーニャ州発祥のサラダであるカプレーゼ。使用されるモッツァレラ・ディ・ブッファラは、同じくカンパーニャ州で生産される水牛乳を原料としたフレッシュチーズです。そこで合わせるワインは、カンパーニャ州のDOCG、ミネラル分が豊富で果実味と酸味のバランスが良いグレコ・ディ・トゥーフォがおすすめです。カプレーゼで一緒に食べるトマトもミネラル分が豊富なため、料理全体がグレコ・ディ・トゥーフォとよくマリアージュします。
ちなみにカンパーニャ州産のモッツァレラは日本でも輸入されていますが、新鮮さが命のため、現地で食べるモッツァレラは格段に味が違います。旅行で訪れた際は、マストで食べたいものとして覚えておきましょう。ぜひ本場の味をご賞味あれ!
現地のスーパーやワインショップで購入できる、おすすめワインを紹介します。日本で購入できるものでも現地で買うとお得に入手できるので、旅行で訪れた際はぜひチェックしてみてください。
ゲヴェルツトラミネールはフランスのアルザスで主に栽培される白ぶどう品種ですが、元々の起源がイタリア北部のトラミンが原産地と言われています。ライチやトロピカルフルーツなどの香り高いアロマが特徴的で、甘口のような香りですが味わいはしっかりとしたミネラル感で辛口です。ワイン漫画『マリアージュ~神の雫最終章~』の1巻でも登場します。
トスカーナ州の名産であるサンジョベーゼ100%のフルボディで、キャンティの魅力が凝縮されたようなスミレと木苺の芳醇な香りとなめらかな味わいを楽しめます。タンニンと酸味のバランスが良く、お肉料理やサラミなどにとても合います。エチケットラベルは、画家ティチアーノが描いた「Lord(君主)」が目印です。
フェウディは90年代に登場した、年間350万本生産する南イタリアの大手ワイナリーです。なかでも土着品種の黒ぶどう種アリアニコを100%使用したタウラージは、ワインの世界的評論家ロバート・パーカー氏のパーカー・ポイントで93点を獲得しました。シナモンやカシスのようなアロマで、まろさかなタンニンと酸味が秀逸な味わいとなっています。
他にもフェウディではトゥーフォやイルピニアなどの産地でもワインを生産しており、コンパクトな四角のマークが描かれたエチケットラベルが目印です。
プラネタのエトナロッソは国内外共に人気のあるシチリア州の赤ワインで、エトナ山の麓(ふもと)で生産されています。その味わいは火山性のミネラルと、使用されている黒ぶどう品種ネレッロ・マスカレーゼ特有のタンニンが感じられ、まさにエトナ山のエネルギーが感じられます。
美食の国イタリアでは、食とワインを追求すると本当に胃がいくつあっても足りません。メイン料理だけでなく、その土地ごとに作られ、輸出もされず地産地消で楽しまれるチーズや生ハムも多くあるため、今まで味わったことのない感動の代物に出会えることも多々あります。そしてワインも移動が少ないほど味が変わりにくいため、日本で飲んだものでもより美味しくなっている!ということもあります(もちろん輸入されていないワインも星の数ほどあります!)。ワインも料理も、現地の空気で味わうことで最高の味わいとなるのです。旅行の際はたくさん歩いてお腹を空かせて、存分に現地の味をお楽しみください。それではBuon appetito!(召し上がれ!)