九份は、台北の東北約30kmに位置する山間の小さな町です。赤い提灯が連なる町並みは、まるで映画のワンシーンのようなノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。この記事では、ショートトリップ先としても台湾屈指の人気を誇る九份の、見どころや楽しみ方、観光の際に気をつけたいポイントなどを紹介します。
まずは九份の基本情報を見ていきましょう。日本語できゅうふん、台湾中国語でジーフェンと発音する九份。アニメーション映画『千と千尋の神隠し』の舞台に似ていることで日本でも注目を集めましたが、歴史をさかのぼると映画のイメージとはまた違った魅力的な表情が見えてきます。
九份は1893年に金鉱が発見され、第二次世界大戦後の一時期まで金の採掘で空前の繁栄を誇りましたが、金鉱脈が尽きるとともに急激にさびれて打ち捨てられてしまいます。しかし、大ヒットした台湾映画『非情城市』のロケ地となったことをきっかけに人気観光地として復活。今では古き良き町並みに出会える場所として、外国人観光客からも絶大な人気を集めています。
山の中腹を東西に這うように広がる基山街(チーシャンチエ)は、昔のトロッコ道。ここは飲食店や土産物店が密集しており、連日大賑わいのエリアです。山の急斜面を直登する豎崎路(シューチールー)には、華やかな時代を思わせる建物が今も残り、趣のある茶藝館(ティーハウス)などに姿を変えています。九份と共にゴールドラッシュをもたらしたもう一つの金山、金瓜山(ジンクワスー)は一山越えたところに静かに存在しています。九份からバスで10分ほど、今は黄金博物館(ホァンジンポーウーグワン)区として整備されています。
台北から九份への行き方は①電車とバスで乗り継いでいく方法と、②バスで行く方法があります。それぞれのアクセス方法は下記の通りです。
東部幹線で「瑞芳(レイファン)」駅まで行き、そこからバスかタクシーで九份を目指します。バスを利用する場合は金爪石行きのバスに乗り換え、「九份老街(ジョウフンラオジエ)」というバス停で降りましょう。電車の所要時間は40分~60分ほど。バスは15分~20分ほどです。
駅前のバス停から、基隆客運バス1062系統の金爪石行きに乗ります。「九份老街」で下車する際に、現金か、もしくは悠遊カードという公共交通機関のICカードで運賃を支払います。悠遊カードは空港で手に入れられるので、台湾に着いたら最初にゲットしておくと便利です。帰りのバスは混み合うことがあるので、余裕をもって行動することをおすすめします。
観光のための滞在時間は、移動時間を考慮して半日ほどがよいでしょう。
九份老街バス停からショップやレストランなどが軒を連ねる基山街を通って、豎崎路(スゥチールゥ)の階段を下りていくのが九份の定番観光コース。基山街と並行する軽便路にもショップや民宿が点在しており、賑やかな雰囲気です。ここではそんな定番コースを歩きながら寄りたい観光スポットを紹介します。
かつて九份が金鉱業で栄えた頃の大邸宅を利用してできた茶藝館。赤いランタンが連なった建物は、九份のシンボルともいうべき佇まいで、店内ではお茶だけでなくお酒や点心も楽しめます。屋上はオープンテラスになっており、九份の町並みを眺めながらお茶することもできます。
Amei Tea House preserves its historic Japanese style of architecture. Discover Jiufen's rich histor…
九份の穴場スポットともいえる「聖明宮」。ここでは商売繁盛の関公(関聖帝君/中国の武将・関羽)が祀られています。九份老街ほどの喧噪や混雑はなく、観光客もそれほど多くないので落ち着いた時間を過ごせます。極彩色で彩られた廟や彫像群は見応えがあります。階段を上った先の高台に位置しており、ここから見られる景色も絶景。参拝料は無料なので、大通りからちょっと道を外れてお参りに行くのも楽しいですよ。
聖明宮のそばには九份名物、タロイモ団子「芋圓(イーユェン)」の専門店である頼阿婆芋圓があります。食べ方はホットかアイスの二種類あり、ホットは温かいシロップをかけてお汁粉風に、アイスはかき氷のようにして食べられます。入口だけ見ると狭いように感じますが、お店の奥には九份の景色を遠くまで一望できる客席があります。休日には大行列になることも多い人気店です。
約120年前に建てられたという、歴史的建築にも認定された木造家屋をリノベーションして造られた茶藝館です。かつては名士の住居として使われていた重厚な造りの建物で、ゆっくりとおいしいスイーツをいただけます。オリジナルデザインのかわいい茶器は購入も可能。このお店のオーナーは台湾のアーティストで、細部まで作りこまれたアンティーク調の内装も注目したいところ。階下には作品も展示されています。
九份観光を楽しむための注意点がいくつかあります。ポイントを頭に入れておけば、観光がさらに快適になりますよ。
九份は雨の多いエリアです。天気予報などをチェックし、雨の予報の場合は必ず傘やレインコートなどの雨具を持参しましょう。また、九份は天候が急変しやすい土地でもあるので、晴れの予報が出ていても念のため雨具を用意していくと安心です。
九份の町中には公共トイレもありますが、混雑しやすく、特に女性用のお手洗いは長蛇の列になることも。空いているトイレを見つけたら先に済ませておくか、レストランやカフェに行く機会を活用しましょう。お店のお手洗いは公共トイレより清潔なのでおすすめです。また、ほとんどの公共のトイレにはトイレットペーパーが設置されていないので、ポケットティッシュやウェットティッシュは必須!
九份は坂や階段が多く、高低差のある町並みが特徴。また雨が多くて滑りやすいことも考慮しましょう。観光は基本的に町歩きが中心になるので、歩きやすい靴で行くことをおすすめします。ヒールの高い靴などは避け、履き慣れたスニーカーなどで出かけましょう。
ライトアップや夕暮れの町並みが人気の九份。せっかく観光するなら夜景を楽しみたいという人は多いと思いますが、この時間帯はやはり人気。九份は狭い路地が多いので、かなり混雑します。階段や坂も随所にあるため、小さな子供や年配の方を連れていく場合は困ることがあるかもしれません。そこで狙い目なのが午前中の早めの時間です。朝の時間帯なら人気の茶藝館にもスムーズに入店できます。早い時間に台北から九份に移動する場合は、ツアーで行くのがおすすめです。早朝は九份本来の、しっとりと落ち着いた時間を過ごすことができるでしょう。
台湾観光で欠かせない九份ですが、ネックはやはり移動と混雑。特に帰りのバスは台北へ帰る観光客で非常に混み合い、バス停前に長蛇の列ができることも。また、バス酔いしやすい人や時間が限られている人は利用しにくいかもしれません。そこでおすすめなのが現地オプショナルツアーへの参加。九份とともに、天燈上げを体験できる十分を訪れるツアーもあり、人気のレストランも優先的に入店できます。友人や家族と気兼ねなくゆっくり旅したい方には貸切チャーターもおすすめですよ。
※交通機関や施設の料金、時間等は予告なく変更になる場合があります。最新情報は公式サイトも合わせてご確認ください。