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カリフォルニアワインの基礎徹底ガイド|5大産地や品種も紹介!

アメリカ産ワインの生産量90%を占める一大ワイン産地カリフォルニア州。世界のワイン愛好家の注目を集めながら、最新技術を活用し進化し続けています。この土地の気候特性によりゆっくりと熟したブドウは、果実味たっぷりでパワーあふれるワインを生み出します。ブドウ品種や産地の特徴をとらえて、アメリカ最大の銘醸地カリフォルニアのワインの魅力を紐解いていきましょう!

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2020/06/14

カリフォルニアワインの基礎知識

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カリフォルニアワインの主な産地

カリフォルニアワインの生産地は主にノース・コースト、セントラル・コースト、シエラ・フットヒルズ、セントラル・ヴァレー、サウス・コーストの5つに分かれます。その5つの地域の中にナパやソノマに代表されるカウンティ(群)があり、さらにそのカウンティの中にAVA(American Viticultural Area)が存在します。AVAとはアメリカ政府が正式に認定した栽培地域のことで、認定地域内で収穫されたブドウを85%以上使用している場合、ラベルにその地域名を記載することができます。フランスのワイン法とは仕組みが異なり、大きなAVAの中に小さなAVAが含まれていたり、複数の地域にまたがるAVAが存在します。

カリフォルニアワインの特徴

太平洋から冷気が流れ込む冷涼な気候と長い日照時間のおかげでカリフォルニアのブドウはよく熟します。そのブドウで造られるカリフォルニアワインは、口に含んだ瞬間に豊かな果実味を感じるフルーティーなワインに仕上がります。ジューシーなブドウの香りも特徴のひとつで、お酒を飲み慣れていない人にも飲みやすい印象を与えてくれます。

■気候特性

カリフォルニアの緯度はスペインやポルトガルに近く、温暖なイメージがありますが、太平洋から流れ込む冷気の影響で冷涼な気候の特性があります。例えば、カリフォルニアの中でも主要な産地とされ、サンフランシスコより北に位置するナパヴァレーの7月の平均気温は18℃前後です。日本の7月の平均気温(25℃以上)と比較すると夏でも涼しいことがわかります。

また、日照時間が長いため長い時間をかけてブドウがよく熟します。さらにはブドウの収穫期である秋の降雨量が少なく、ブドウの完熟をギリギリまで待つため、収穫を遅らせることが可能です。フランスでは収穫を待つ間に雨が降りブドウが水っぽくなるというリスクがありますが、そのリスクが小さいことがカリフォルニアの特性でもあります。こういった環境の中でよく熟し、糖度を上げたブドウがカリフォルニアワインのおいしさの元となっているのです。

カリフォルニアワインの有名なブドウ品種

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赤ワインのブドウ品種

黒ブドウを使用し、皮や種を一緒に発酵して仕上げる赤ワイン。カリフォルニアで特に有名な黒ブドウの品種を、気候や栽培方法、香りなどをポイントに紹介していきます。

■カベルネ・ソーヴィニヨン

フランス、ボルドー地方原産の品種。赤ワインの王様ともいわれ、小粒で果皮が厚く、種が大きいのが特徴です。温度変化や病害への適応力が高いため世界で広く栽培される国際品種で、地域により個性あるワインが造られています。

比較的温暖で水はけのいい場所が栽培適地とされ、ほかの品種とブレンドされることも多いです。カシスやブルーベリーなどに近い濃厚な果実味が特徴で、厚い皮と大きな種から生まれるしっかりとしたタンニンを味わえます。カリフォルニアでは主にノースコースト、セントラル・ヴァレーで栽培されています。

■ピノ・ノワール

フランス、ブルゴーニュ地方原産で、最高級ワイン「ロマネ・コンティ」に代表される黒ブドウ品種。気品のある華やかな香りが特徴で、ブレンドではなく単一品種で造られることが多いです。粒は大きめで、皮が比較的薄いのが特徴。気まぐれといわれるほど繊細でかつてはブルゴーニュでしか育たないといわれていましたが、カリフォルニアでの栽培をきっかけに今では国際品種のひとつとなっています。

冷涼な気候でじっくりと育ち、渋みの少ない口あたりのよいワインとなります。ラズベリーやイチゴのようなエレガントな香りに熱狂的なファンも多い品種です。カリフォルニアではノース・コースト、セントラル・コーストで多く栽培されています。

■ジンファンデル

カリフォルニアを代表するブドウ品種のひとつ。19世紀前半にアメリカに苗木が持ち込まれ、以降100年以上にわたりカリフォルニアの独自品種とされていました。しかし1990年代にイタリアのプーリア地方で栽培されるプリミティーボと同じDNAを持つことが確認されます。とはいえ今も昔もカリフォルニアワインには欠かせない品種といえます。

粒の大きさは中程度、果皮が薄いながら色が濃いのが特徴です。味はチェリーやラズベリーのような果実味と程よい酸味が特徴です。1粒ずつの成熟にばらつきがあるため、粒によっては他の品種では見られないほどの高い糖度をもち、年によってアルコール度数の高いワインが生まれることもあります。カリフォルニア全体で多く栽培されていますが、中でもシエラ・フットヒルズはジンファンデルを代表的なブドウ品種とする産地として有名です。

■メルロー

カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワールと並び人気がある国際品種のひとつ。ボルドー地方原産で、カリフォルニアではセントラル・コーストで多く栽培されています。粒の大きさは中程度、大きめの房をもちます。水分の多い土壌を好みますが、気候や土壌に寛容で世界中で広く栽培されています。香りはレッドチェリーやプラム、プルーンに近く、きめ細やかなタンニン、なめらかな丸みのある味わいが特徴。渋みが苦手な人でも飲みやすい赤ワインに仕上がる品種です。

白ワインのブドウ品種

主に白ブドウを使用し、圧搾(圧縮)を経て皮や果肉を取り除いてから果汁だけを発酵させる白ワイン。ここでは、カリフォルニアの白ブドウ品種で有名な4つを見ていきましょう。

■シャルドネ

白ワインの女王と呼ばれる代表的な白ブドウ品種。ブルゴーニュ地方原産で、シャンパン(強発泡性ワイン)の主要品種でもあります。粒は小ぶりの円柱形、薄い皮が特徴です。

環境への順応性が高く、世界中で広く栽培されています。ブドウ自体の味の主張が少ないため、産地や気候、テロワールの違いを味わえるワインになります。カリフォルニアの5つの産地でも広く造られており、冷涼な海側では柑橘を感じるスッキリとした味わい、内陸側では南国の果実のような味わいのワインに仕上がります。

■フレンチ・コロンバード

フランスのシャラント県、ガスコーニュ地方を中心に栽培されている品種。フランスでは主にブランデーのコニャックやアルマニャックの原料として生産されています。カリフォルニアでは、この品種の特徴である自然な酸味を生かしたデイリーワインを生産しています。レモンやライムなどのスッキリとした香りが際立つ爽やかなワインに仕上がります。

■ピノ・グリ

ブルゴーニュ地方原産の白ワイン品種。収穫量が安定せず一時は生産が減りましたが、品種改良によって現在では多くのワイン産地でピノ・グリのブドウ畑の面積が拡大しています。冷涼で水はけの良い土地を好み、果皮は灰色を帯びた紫色など白ワイン品種の中では濃いめの色合いです。カリフォルニア大学の研究によりピノ・ノワールの突然変異種であることがわかっています。辛口ながら熟したトロピカルフルーツのような香りは貴腐ワインにも類似しています。

気候が冷涼なカリフォルニアでは、酸味が加わったよりフレッシュなピノ・グリ種ワインに仕上がります。

■ソーヴィニヨン・ブラン

ボルドー地方原産でカベルネ・ソーヴィニヨンの親にあたる品種。粒も房も小ぶりでクリアな緑色をしています。原産地は涼しい気候ですが、温暖な地域でも育つことからニュージーランドなど南半球でも多く栽培されています。青々としたフレッシュな香りが特徴で、特に冷涼なカリフォルニアでは青りんごやレモンなど爽やかな香りのワインに仕上がります。

カリフォルニアワインの代表的産地の特徴

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ノース・コースト

カリフォルニアワインで、高品質かつ本格派のワインを探すならまず押さえたいのがノース・コーストです。サンフランシスコの北側に位置し、海と山に囲まれたノース・コーストは太平洋の冷気の影響を受ける冷涼な低地と海風の影響が少ない温暖な山間部に分かれます。ノース・コーストの中でも特に銘醸地として知られているのがナパヴァレーです。ノース・コースト内でも比較的温暖な地域で、スクリーミング・イーグルやオーパス・ワンなど数々のプレミアムワインの生産者が軒を連ねます。

カベルネ・ソーヴィニヨンが栽培面積の50%を占め、濃厚で力強く、華やかなワインを生み出しています。また、カリフォルニアワイン発祥の地とされるソノマヴァレーもノース・コーストに位置します。ナパヴァレーよりも海側に位置するため冷涼です。険しい地形と冷涼な気候から生み出されるワインは繊細で程よい酸味を備えています。ブルゴーニュ地方のようにピノ・ノワールやシャルドネ主体の単一品種のワインが多く作られているのも特徴です。

セントラル・コースト

太平洋沿いに位置し、サンフランシスコからサンタバーバラまで南北に長いセントラル・コースト。シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデルなど北から南まで多くの品種が栽培されています。多くの品種から造られるさまざまなタイプのカリフォルニアワインを楽しめるのがこの産地の魅力です。

セントラル・コースト最南部に位置するサンタバーバラは、ハリウッドセレブの邸宅が並ぶ風光明媚な別荘地として有名ですが、ナパやソノマにも匹敵するほどの人気ワイン産地で、高品質なピノ・ノワールやシャルドネが生産されています。

また、セントラル・コースト内の北部に位置するモントレーは海から流れて来る厳しい冷気と霧の影響でじっくりと時間をかけてブドウが育つため、州の中でも収穫時期が遅いエリアとされています。時間をかけて熟したブドウを活かした、凝縮感のあるワインが生み出されています。

シエラ・フットヒルズ

シエラネバダ山脈のふもとにあり、昼夜の寒暖差が大きい冷涼な地域。1950年代のゴールドラッシュの時代にワイン醸造が始まり、当時から現在に至るまで代表的な栽培品種はジンファンデルです。また、黒ブドウを白ワインの製法でピンク色のワインに仕上げるブラッシュワインもこの土地で作られています。

色が濃く、しっかりとした果実味が特徴のジンファンデルを楽しみたい方は、シエラ・フットヒルズのワインをぜひ一度試してみてください。

セントラル・ヴァレー

カリフォルニア州の中央に広がるセントラル・ヴァレーは、旬の食材が満載の農業の中心地です。カリフォルニアワインの約50%を生産しており、生産量でいうとカリフォルニア最大のワイン産地といえます。日常的に楽しめるテーブルワインを多く生産しており、値段を気にせず楽しめるデイリーワインをお探しの方におすすめの産地です。

内陸部のため比較的温暖で降水量が少ない気候です。シャルドネ種、カベルネ・ソーヴィニヨンなどを多く栽培しています。最近ではより高品質なワインの生産も始まっており、デイリーワインだけではない新たな魅力も見出されている注目の産地です。

サウス・コースト

ロサンゼルス近郊、カリフォルニアの最も南に位置するワイン産地です。セントラル・ヴァレーと同じくデイリーワインを多く生産していますが、実はアメリカワインの中でも長い歴史を持っていて、アメリカ国内で最初にワインが作られた土地とされています。

非常に暑く乾燥した気候で、カベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデルなど多種多様な品種を栽培しています。長い歴史を持つ伝統的なワイン産地ですが、現在では農地の都市化や水不足の影響で土地全体のワイン生産量が少なくなってきています。

楽しみ方いろいろ、カリフォルニア観光を盛り上げるワインツアー

発展し続けるアメリカの大銘醸地・カリフォルニア。比較的新しい産地だからこそマナーや歴史にとらわれすぎず、カジュアルにワインを楽しめる魅力にあふれています。ワインの世界に足を踏み入れようとしている皆さんが、日々のワイン選びを気軽に楽しむのにぴったりな産地ではないでしょうか。

現地を訪れた際は、カリフォルニアならではのワインツアーもぜひチェックしてみてください。ナパやソノマのワイントレインなど、アクティビティと一緒にワインを堪能できる色とりどりのツアーがそろっています。日常の食卓を鮮やかに彩る1本を見つけに、カリフォルニアワインの旅へと出発しましょう!

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