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フランスワインの基礎徹底ガイド|AOC解説に産地、品種も紹介!

ヨーロッパを代表するワイン大国のひとつに挙げられるフランス。世界的にも有名な2大産地のボルドーとブルゴーニュを筆頭に、聞きなじみのあるブドウ品種や名高いワインの多くが、フランスの多彩な産地で造られています。赤ワインや白ワインにとどまらず、ロゼワイン(ピンク色のワイン)やスパークリングワイン(発泡性ワイン)の名産地がそろっているのも、料理とワインのペアリングが豊富な「美食の国」ならでは。

よく使われる用語やブドウ品種、産地の特徴をおさえて、奥深いフランスワインの魅力に迫りましょう!

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2020/05/15

フランスワインの基礎知識

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フランスワインの主な産地

フランスがワイン王国といわれる大きな理由に、産地の個性と多様性が挙げられます。2大産地として知られる南西部のボルドー地方と中東部のブルゴーニュ地方は歴史も古く、上質な高級ワインを製造している名産地です。北部には、ドイツとスイスの国境に近いアルザス地方や国内最長の河川であるロワール川流域に広がるロワール地方、パリの北東に位置し、シャンパンの産地として有名なシャンパーニュ地方などが広がっています。

ブルゴーニュ地方以南、比較的温暖な南フランスにも名産地がそろいぶみ。リヨンの南に位置し、ローヌ川に沿ってブドウ畑が広がるコート・デュ・ローヌ地方、南東部の地中海に面し、マルセイユからニースまでの一帯を占めるプロヴァンス地方、マルセイユから西、スペインの国境に近い南部のラングドック・ルーション地方などがその例です。

フランスワインの特徴

日本の北海道からサハリンに近い緯度の環境で、古くから厳しい規定に沿って造られる質の高いフランスワイン。まずは気候タイプやワイン法、頻出用語などを見ていきましょう。

■気候特性

フランスは、ワインの栽培に適している地域を示す「ワインベルト」の北半球の地域に属しています。主に北緯30度~50度、南緯30度~50度、平均気温10℃~16℃の地域が対象(※)となっていて、代表的なボルドー地方とブルゴーニュ地方もこの栽培適地にあてはまります。地域ごとに見ていくと、中部から東部の地域は大陸性気候といわれ、年間の気温差が大きく、四季がはっきりしています。晴れの確率が高く、特に冬は湿度が低く乾燥しやすいのも特徴です。秋になるととたんに気温が下がるため、品種によってはブドウが育ちにくい場合もあります。

フランス西部、大西洋側海洋性気候に属し、海からの温暖な風の影響を受けやすい地域です。夏は涼しく冬は寒すぎず、秋が長いのが特徴といえます。年間の気温差が少なく、他の地域と比べて湿度が高い傾向にあります。

地中海に面したフランス南東部地中海性気候のため1年中日射量が多く、夏は特に乾燥しやすく気温も高いです。冬は比較的温暖で少し雨の日が増えますが、ブドウが育つ期間には影響が少ないといわれています。

※ワインベルトの基準:地球温暖化の影響等で変更になる場合があります。   

■AOCワイン

ワインのことを調べると必ず遭遇する「A.O.C(Appellation d’Origine Contrôlée)」という頻出用語。これは「原産地管理呼称(原産地呼称統制)」を指し、産地や品種、木の剪定方法などの栽培法、収穫量や製法などを厳格に規定したフランス独自のワイン法、規格(認証)制度です。産地の詐称や質の低いワインが出回る事態が発生したことを受け、1935年にINAO(国立原産地名称研究所)が制定しました。AOCに認定されたワインは特定の生産地域、特定のブドウ品種から作られた高級ワインを意味します。この法律に沿ったワインの「原産地」を示すときは「アペラシオン」ということも多いです。

混同しやすい「A.O.P.(Appellation d’Origine Protégée)」はヨーロッパの「原産地保護呼称」のことで、AOCにならって1992年に定められました。チーズや野菜、家畜の鳥などにも適用され、気候条件や土壌、飼料、伝統的な飼育や生産法などの地域特性が生産品に反映されるという考えのもと、原産地を保証することを目的に規定された制度です。2008年にEU全体でワイン法が定められたことを受け、フランスのAOCはAOPの一部とされ、2009年以降は「AOP法」と総称することになりましたが、現在もAOCという呼称が使われています。

AOC(AOP)を頂点とし、その下に位置づけされるのが「IGP(EU上ではIndication Géographique Protégée)」で、地理的表示保護ワインといいます。フランスでは「Vin de Pays」という表記をされることがあり、過去の4段階の分類で下から2番目に相当します。地域や品種などは統制されていますが、AOCよりは規定が緩く、保護範囲としている区分けが広いのも特徴です。IGPよりもカジュアルなものとして位置づけされるのが「Vin de Table」で、生産地域の表示がない、一般消費用のテーブルワインを指します。

多様な産地で造られているフランスワインは、このような統制があることで品質と価格のバランスを維持することができているといわれています。

■シャトー、ドメーヌ、メゾンの違い

ワインの生産者を指す「シャトー」はボルドー地方を中心に広く使われています。ブドウ畑を所有し、栽培から醸造、熟成、そして瓶詰めまでの製造を行なう生産者全般の名称です。ワインの生産に広大な畑や大きな醸造所が必要なことから、フランス語で「お城、大邸宅」を意味するシャトーを使用するようになったといわれています。

また、同様に生産者を指す言葉で、ブルゴーニュ地方で使われている名称が「ドメーヌ」です。フランス語で「所有地、区画」というような意味があります。ブルゴーニュでは比較的小規模に、家族単位でもワインが造られることが多く、広すぎない敷地を利用して製造を行なっている生産者や農家をドメーヌと呼びます。

ドメーヌと混同しやすい言葉として「ネゴシアン」もぜひ覚えておきましょう。農家からブドウやワインを買い付け、自社で熟成や瓶詰めなどの製造や出荷を行なう生産者をネゴシアンといい、主にブルゴーニュ地方で使われています。

ほかにも、シャンパーニュ地方ではフランス語で「家」という意味の「メゾン」を製造業者、酒販業者の名称としています。大企業のメゾンが多く、製造にかかるコストがかかるため、農業と加工業の分業制が整っているのもこの地域の特徴です。栽培農家と提携する大手メーカー(メゾン)が瓶詰めや販売を行なうシャンパンを「NMシャンパーニュ(ネゴシアン・マニピュラン)」、農家などが栽培から販売までを行なうシャンパンを「RMシャンパーニュ(レコルタン・マニピュラン)」と呼び、ボトルのラベルにも表記されています。

■ワインの格付け

フランスで「ブドウ畑、醸造所」などを表すときに用いられる「クリュ」。ワインの格付けで使われる頻出用語のひとつです。

ボルドー地方では地区ごとに独自の格付けがあるのが特徴です。特に有名なのは、世界有数の赤ワインの産地と名高いメドック地区。1級(プルミエ・グラン・クリュ)から5級(サンキエム・グラン・クリュ)まで5段階の格付けがあり、最高峰の1級を獲得したシャトーを「五大シャトー」と呼んでいます。「シャトー・マルゴー」や「シャトー・オー・ブリオン」がその例です。

ブルゴーニュ地方では、畑、区画(クリマ)単位で格付けが行われています。上から特級畑(グラン・クリュ)、1級畑(プルミエ・クリュ)、村名、地域の順にボトルのラベル表記が異なります。

シャンパーニュ地方では、ブドウを生産する村(コミューン)ごとに格付けがあり、村単位で高い順に特級(グラン・クリュ)、1級(プルミエ・クリュ)を名乗っています。ブドウの取引価格によって格付けされ、100%に査定された村を「グラン・クリュ」とし、90%~99%に査定された村を「プルミエ・クリュ」としていますが、この価値基準は今後変わる可能性があるといわれています。

フランスワインの有名なブドウ品種

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赤ワインのブドウ品種

黒ブドウを使用し、皮や種も一緒に発酵して造る赤ワイン。果皮、特に種子に多く含まれている渋み成分「タンニン」の風味があるのも特徴です。フランスで特に有名な黒ブドウの品種を、気候や栽培方法、香りなどをポイントに紹介していきます。

■ピノ・ノワール

世界一高価なワインとして知られる「ロマネ・コンティ」の品種で、ブルゴーニュ地方を代表する黒ブドウです。粒は大きめで皮が比較的薄く、病気にかかりやすいため栽培が難しいといわれています。繊細なため、ブドウが一気に熟す暑い産地よりも冷涼な気候が適していて、発祥の地であるブルゴーニュを中心に、ロワール川中流やシャンパーニュ、アルザス地方などで造られています。ほかの品種とブレンドして造られることが少ない単一品種で、ラズベリーやチェリーなどの赤い果実系の華やかな香りも特徴。比較的タンニンが少なく軽やかで、明るいルビー色をした口当たりのなめらかなワインになります。

■カベルネ・ソーヴィニヨン

ボルドー地方を原産地とする赤ワイン用の品種で、小粒で皮が厚く、種が大きいのが特徴です。温度変化や病害に対する適応力が高いため、世界でもっとも栽培される国際品種として知られ、地域によって個性を出しやすいのも魅力のひとつ。基本的には比較的温暖で水はけのいい場所が栽培適地といわれていて、ほかの品種とブレンドされることも多くあります。フランスではボルドー地方の左岸地区が有名で、南部やロワール川流域でも造られ、長期熟成タイプのワインがメジャーです。香りはカシスやブルーベリーなどに近く、深みのある濃い色合いでタンニンも多いため重厚な味わいのワインに仕上がります。

カベルネ・ソーヴィニョンの祖先といわれる「カベルネ・フラン」も合わせて覚えるのがおすすめ。ボルドー右岸ではメルローと、左岸ではカベルネ・ソーヴィニョンとブレンドされることも多い名脇役の黒ブドウ品種で、軽やかな口当たりとエレガントな香りをもたらします。北西部のロワール地方ではカベルネ・フランを主役にした赤ワインも生産されています。

■メルロー

ボルドー地方を原産地とし、粒の大きさは中程度、房が大きいのが特徴の品種です。水分の多い土壌を好み、樹木が強く早熟で、温暖な地域はもちろん冷涼な環境でも造ることができるため、世界中で広く栽培されています。フランスではボルドー地方の右岸地区が有名ですが、南部のラングドック・ルーションでも造られるようになりました。糖分が上がりやすいため濃厚な果実味があり、渋みの強いカベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドされることも。ワインの香りはレッドチェリーやプラム、プルーンに近く、ほどよい渋みとコク、やわらかな舌触りを楽しめます。

■シラー

コート・デュ・ローヌ地方の北部を原産地とする品種で、粒は小さめで皮が厚く、紫に近い濃い色合いが特徴。温暖な気候を好み、長期熟成型で発芽は遅め、樹勢が強く病害に対する適応力があります。個性の強いブドウで、世界中のワイン生産国で栽培面積が増えています。フランスでは主に南東部のローヌ地方を中心に、地中海性気候のプロヴァンスやラングドック・ルーションでも親しまれ、ローヌではブレンドしたものよりも単一品種のワインが多く造られています。黒コショウやチョコレートを思わせるスパイシーな香りが魅力で、豊かな渋みとジューシーな果実味の両方を兼ね備えた力強いワインに仕上がります。

白ワインのブドウ品種

主に白ブドウを使用し、圧搾(圧縮)することで皮や果肉、種を取り除いてから果汁だけを発酵させて造る白ワイン。熟成の工程で木の樽に入れたものには、微量のタンニン(渋み成分)が含まれている場合があります。ここでは、フランスの白ブドウ品種で有名な3つを見ていきましょう。

■シャルドネ

シャンパン(強発泡性ワイン)の主要品種として知られる、ブルゴーニュ地方を原産地とする白ブドウ。「白ワインの女王」とも呼ばれ、粒は小さめで房が円筒形、皮が薄いのが特徴です。あまり主張がなく、早熟で冷涼な気候にも対応でき、環境や醸造方法によってさまざまな味わいを楽しめる人気の品種でもあります。世界中で広く栽培され、辛口の白ワインで使われることが多く、フランスでは発祥の地であるブルゴーニュに加え、北東部のシャンパーニュやアルザス地方も産地として有名。シャンパーニュ地方では、黒ブドウのピノ・ノワールとブレンドしたシャンパンも、100%シャルドネを使用したものも両方造られています。

土地の影響を受けやすいため、冷涼な地域ではレモンやミントに近い香りで切れのある酸味の白ワインになり、温暖な地域ではマンゴーやバナナなどの南国フルーツに近い香りで、酸味が少しおさえられた豊満な白ワインとなります。

■ソーヴィニヨン・ブラン

ボルドー地方を原産地とする国際品種で、黒ブドウ品種のカベルネ・ソーヴィニヨンの親にあたるといわれています。粒も房も小ぶりで、クリアな緑色をしていますが、温暖な地域ではつやのある濃い黄色になることも。早熟型で樹木が強く、涼しい気候に適していますが、温暖な地域でも造られることが増え、世界中で栽培されています。比較的早い時期に収穫され、低温発酵によって最大の特徴である香りを引き立たせる熟成方法が親しまれています。

ボルドー地方ではブレンドしたもの、北西部のロワール渓谷では100%単一品種の白ワインがメジャーです。冷涼な地域ではハーブやアスパラガスの香り、フレッシュな酸味とグレープフルーツのような苦味を、温暖な地域ではパッションフルーツに近い香りと果実味を楽しめます。

■リースリング

原産地はドイツのライン川流域で、フランス北東部のアルザス地方でも造られている白ワイン用の国際品種です。粒は丸くて小さめ、房も大きくなく、淡い緑や黄金色をしています。晩熟型でほかの品種よりも収穫が1か月ほど遅く、強い日照が苦手で涼しい気候を好むため、栽培が難しい高貴品種ともいわれています。リンゴやハチミツ、花のような甘くて繊細な香りが特徴で、辛口からスパークリング、甘口まで幅広く造ることができます。しっかりとした酸味とクセのなさも魅力で、果実の凝縮感も味わえるやさしいワインに仕上がります。

フランスワインの代表的産地の特徴

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ボルドー地方

南西地方に位置するフランスワインの2大産地のひとつで、大西洋に注ぐジロンド川の支流に囲まれた地域です。ブドウ栽培が始まったのは紀元前2世紀からとされ、「ボルドーワイン」という言葉が広まったのは12世紀半ばからといわれています。ボルドーがイギリス領となり、交易によってワインの出荷量が増えたため、醸造が栄えていきました。年間の気温差が少なく、温暖な海洋性気候のため長熟、晩熟型の品種を多く栽培しています。主にメルロー(メルロ)やカベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨン・ブランなどがその代表例です。

ボルドー地方を流れるジロンド川は、東の中央山脈から流れるドルドーニュ川と、ピレネー山脈から流れるガロンヌ川が合流した河川で、ワインの産地も「左岸」と「右岸」の地区に分かれています。地図で見ると、川の下流が北にあるので、ジロンド川の東側の地域を「右岸」、西側を「左岸」と呼びます。

■メドック

ボルドー市街地の北側、ジロンド川の左岸地区に属する赤ワインの産地で、ボルドーの格付けワインの大多数が造られる中心地区です。サンテステフ村から南がオー・メドック、北がバ・メドックと呼ばれ、オー・メドック地区だけでもAOCの産地が6つほどあり、銘醸地として知られています。主要品種はカベルネ・ソーヴィニヨンで、単一品種で造られることもありますが、メルローなどの多品種とブレンドした赤ワインが多く、長熟型で重厚感のある味わいもメドック産の特徴です。1855年のパリ万国博覧会への出品をきっかけに格付けが制定され、5段階の第1級となったシャトーの最高品質のワインは世界中で注目を集めています。

■サン・テミリオン

メルローが多く栽培される地区で、ドルドーニュ川の北側、右岸地区に属しています。地区内でもっとも規模が大きく、公式の格付けを設けている格式の高い銘醸地です。水が豊かな環境で、5,000ヘクタールほどの広大なブドウ畑を持ち、人口2,000人ほどの村でありながら多くの生産者が集まっています。石畳の街並み、11世紀から建てられたとされる中世の修道院や教会も魅力で、シャトー巡りと合わせて観光するのにも最適。美しい畑の景観と歴史遺産が残るこの地域は、1999年にワインの産地として初のユネスコ世界遺産に認定されました。

■ソーテルヌ

ガロンヌ川の中流、左岸のグラーヴ地区に属する村で、世界最高峰の甘口白ワイン「貴腐ワイン」の産地として知られています。この地区は支流のシロン川を挟む5つの村で成り立ち、なかでもソーテルヌとバルサックの村はAOCワインに認定されるほど有名です。シロン川はガロンヌ川よりも温度が低く、その温度差によって発生する霧が白カビを生み、ブドウの水分を奪い、糖分や酸を凝縮させるといわれています。そのような貴重な環境下でできた濃厚な「貴腐ワイン」が、ソーテルヌの名を広く知らしめている理由です。貴腐ワインには、ソーヴィニヨン・ブランなどが使用されています。

ブルゴーニュ地方

ボルドーとともに2大生産地に挙げられるブルゴーニュ。赤白問わず優れた品質のワインを生み出しているため、ブルゴーニュワインは「ワインの王様」とも呼ばれています。中東部に位置し、年間の気温差がはっきりしている大陸性気候のもとで栽培が行われ、単一品種で醸造されるワインが多いのも特徴です。ブドウの栽培は紀元前2世紀ごろからですが、その後キリスト教の修道士や代々のブルゴーニュ公によってワイン造りが進められ、外交に欠かせないものとして発展を遂げていきます。パリに近いこの地域のワインは中世の王侯貴族に親しまれ、上質なワインの産地として国内で広く知られるようになりました。家族経営など小規模な生産形態が主流で、主にピノ・ノワールやシャルドネなどが栽培され、いずれも高級品種としてあまりにも有名です。

■コート・ドール(黄金の丘陵)

ブルゴーニュの首都ディジョンから50kmほど南下した細長い地域を指し、北部を「コート・ド・ニュイ」、南部を「コート・ド・ボーヌ」と呼びます。フランス語で「黄金の丘陵」という意味があり、ブルゴーニュの中枢を担う銘醸地です。コート・ド・ニュイはマルサネからニュイ・サン・ジョルジュの村までのわずか20kmの地域で、主にピノ・ノワールが栽培され、「ロマネ・コンティ」などの高級赤ワインを産出しています。南部のコート・ド・ボーヌは主にラドワ・セリニィからマランジュの村までの地域を指し、赤ワインのみならず白ワインの産地としても栄え、「モンラッシェ」などの銘柄が有名です。コート・ド・ボーヌは毎年11月の第3土曜日から3日間開かれるワイン祭りも名物で、試飲会やオークションが行われ、ブルゴーニュ観光の一大イベントとして注目を集めています。

■ボジョレー

リヨンから北に55kmほどのびている丘陵地帯で、毎年11月の第3木曜日に解禁される新酒のワイン「ボジョレー・ヌーボー」の産地として知られています。大陸性気候でありながら、地中海性気候の影響も受ける地域で、特に赤ワインの生産が多く、収穫の早いカジュアルなテーブルワインから長熟型の重厚な味わいのワインまで造られています。ボジョレー・ヌーボーにも使用されている黒ブドウの「ガメイ(ガメ)」が主要品種とされ、タンニン(渋み)が少ない、軽やかでフルーティーなワインがメジャーです。

■マコネー

ボジョレー地区の北、コート・シャロネーズ地区の南に広がるマコネー地区。ボジョレーと同様、大陸性気候と地中海性気候の特徴をもつ日射に恵まれたやや温暖な地域で、標高が高く、ブドウ畑が南向きの斜面に並んでいます。代表的な村名のAOCにマコンがあり、商業の町として大衆向けのワインが生産されてきました。6割~7割以上が白ワインの生産で、シャルドネなどを主要品種とする早熟型の辛口白ワインが人気。少量ながら大衆向けのテーブルワインも造られ、ロゼワインやピノ・ノワールなどを使用したフレッシュな赤ワインも親しまれています。

シャンパーニュ地方

パリから東へ150kmほどの場所に位置し、フランスワインの産地でもっとも北にあるシャンパーニュ地方。世界遺産都市のランスと、ワイナリーやカーヴ(天然のワインセラー、地下貯蔵庫)が集まるエペルネーが2大都市として有名です。「ドン・ペリニヨン」や「モエ・エ・シャンドン」などで知られるシャンパン(シャンパーニュ)は、この地域で栽培されたブドウを使用し、AOC法で定められた規則や工程に沿って造られたものを指します。大西洋気候と大陸性気候の影響を受けるため、涼しい環境でも育てられるシャルドネ、ピノ・ノワールやムニエが主要品種で、栽培面積の大半を占めています。

320ほどのクリュ(村)で構成され、18世紀末から独自の生産や製造、流通によって発展し広まったシャンパーニュ。その文化的景観は、2015年に「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」という名称で世界文化遺産にも登録されました。

■モンターニュ・ド・ランス

大手メゾン、製造会社が集うシャンパーニュの中心都市ランス。「ランスの山」という意味のモンターニュ・ド・ランス地区は、ランス南東の郊外に位置するなだらかな丘陵地です。シャンパーニュ地方でグラン・クリュがもっとも多い名産地としても知られています。年間の平均気温が10℃前後ほどの冷涼な気候でありながら、日射量も確保できる環境のため、ピノ・ノワールを中心にシャルドネなども栽培しています。ランスは、1991年に文化遺産に登録された「ランスのノートルダム大聖堂、サン・レミ旧大修道院およびトー宮殿」などが集まる都市で、フランス観光の名所としてもおさえておきましょう。

アルザス地方

フランス北東部、ライン川に沿って延びる平原地帯で、ワイン街道が広がる白ワインの名産地として知られています。木組みの家が並ぶ街並みなど、中心都市のストラスブールを筆頭に観光地としても人気の地域です。標高1,424mほどの山がそびえるヴォージュ山脈の地形特性があり、西からの湿った風や雨を受けづらく、乾燥した温暖な気候(大陸性気候)に恵まれています。生産されているワインの9割が白ワインで、ブドウの品種名をAOCとして名乗るのも特徴のひとつ。リースリングなどの高貴品種を単一で醸造することが多く、少量ながらピノ・ノワールなども栽培しています。

ドイツの支配下にあった歴史があるため、フルート型の細いボトルなど、ドイツのスタイルが混ざっているのもアルザスのワインならでは。ワイン街道の町を巡りながら、二国の文化の融合を楽しめます。

ロワール地方

全長1,000kmを超えるフランス最長のロワール川。北西部に位置し、中央部から大西洋に注ぐロワール川流域には、100を超える古城と美しいブドウ畑が広がっています。上流は大陸性気候、下流は海洋性気候のため地区ごとに品種が異なるのも特徴で、主に内陸部から順に中央フランス、トゥーレーヌ、アンジュ・ト・ソミュール、ペイ・ナンテの4地区に分けられます。ブルゴーニュ地方に近い内陸部(上流域)では夏と冬の気温差が大きく、主にソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールなどが栽培されています。両方の気候特性が影響する中流域ではロワールの地ブドウであるグロローなどの黒ブドウも育ち、気温差が少なく湿度が高い下流域ではミュスカデという白ブドウが有名です。赤、ロゼ、白ワインの辛口から甘口、スパークリングと、多種多様なワインが味わえるのもロワールワインの魅力でしょう。

南フランス

南東部のコート・デュ・ローヌ、地中海沿岸のプロヴァンスにラングドック・ルーション地方。ブルゴーニュ以南の3つの主要産地を軸に、多品種のブレンドやリーズナブルな大衆向けワインの生産、ブドウ栽培に適している地中海性気候など、南仏ならではの特徴を探っていきましょう。

■コート・デュ・ローヌ地方

スイス南部とフランス南東部を流れ、地中海に注ぐローヌ川。およそリヨンの南に位置するビエンヌから200kmほど南下したローヌ川流域に広がる赤ワインの産地を、「コート・デュ・ローヌ」と呼びます。北が上流のため、地図上では川の右側が左岸、左側が右岸を指すので注意しましょう。AOC認定ワインに限るとボルドーの次に生産量が多く、南フランスを代表する名産地として知られています。大陸性気候の傾向がある北部は気温差が大きく、左岸に位置するAOCであるエルミタージュでは、黒ブドウのシラーを使用した長熟型の赤ワインが有名です。乾燥しやすい地中海性気候の南部、AOCのシャトーヌフ・デュ・パプでは、糖度とアルコール度数が高く仕上がるグルナッシュという黒ブドウを単一で醸造したものから10種類ほどブレンドしたものまで幅広い価格の赤ワインを楽しめます。

■プロヴァンス地方

地中海沿岸のマルセイユからニースまでの一帯とその内陸部に広がるリゾート地で、ロゼワインの聖地として親しまれています。紀元前6世紀~7世紀、ギリシャ人の植民地であったマルセイユにブドウの木が持ち込まれたのが始まりとされ、国内最古の産地といわれるようになりました。地中海性気候に恵まれているため生産量も多いですが、フランス国内で白ワインよりもロゼワインの出荷量が多いほどブームとなり、海外輸出は少ない傾向にあります。また、プロヴァンスは30℃以上の暑い日が続く時期もあるため、冷やして飲むロゼワインが好まれているのも人気の理由といわれています。主要品種は、スパイシーな香りとコクが特徴のシラー、果実味が強く糖度も高いグルナッシュ、酸度が低いグルナッシュ・ブランなどバラエティに富んでいます。有機栽培に特化した畑をもつ村があるなど、オーガニックワインの生産にも積極的に取り組んでいます。

■ラングドック・ルーション地方

スペインの国境からフランス南部のペルピニャン、モンペリエの都市までの地中海沿岸の一帯を指す産地で、広範囲のため土壌が多様なのも特徴です。ブドウ栽培に適した地中海性気候で栽培面積も広いため、フランス最大のワイン生産量を誇る産地とされていましたが、昔は冷却設備が整っていなかったため気軽に楽しめるテーブルワインの生産イメージが強く残っていました。1980年代に入り、先進的な生産者による開拓、醸造技術の進歩などによりワインが発展し、AOCワインも徐々に増加。ほかの地域に比べるとまだAOCは少ないですが、高い品質のワインが比較的安い値段で手に入るのはこの地域の大きな魅力でもあります。

主要品種はシラーやグルナッシュ、グルナッシュ・ブランなど、プロヴァンス地方と同様、温暖な気候に向いている品種が多数。有機栽培がもっとも進んでいる地域であり、伝統や厳しい格付けに縛られない環境のため、新鋭の生産者が挑戦する産地としても注目を集めています。

フランス観光の選択肢を広げる多彩な産地&ワイナリーが目白押し!

フランス全土に点在する個性に富んだ産地は、知れば知るほど深堀りしたくなる魅力にあふれています。気になるブドウ品種のワインを買ってみるもよし、産地ごとの特色を調べてフランス旅行を計画するもよし。どこに行くか迷ってしまう人は、現地オプショナルツアーの一覧を見て、人気のワイナリーを知るところから始めてもいいかもしれません。この記事を出発点にワインへの好奇心を育て、自分のお気に入りの町やワイナリー、フランスが誇る最上の一杯に出逢いましょう。

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