Buon giorno! 今回はイタリアのワインについてお伝えします。
フランスと並ぶワイン大国、イタリア!実はワイン生産量においては、イタリアが世界一の生産量を誇ります。イタリアワインの歴史は紀元前までさかのぼり、イタリア人の生活の一部として発展してきました。日本本土が南北にのび、その土地によって個性があるように、南北にのびているイタリアもその土地独自の個性とワインがあります。今回はそのイタリアワインの基礎知識を紹介していきます。
イタリアワインの特徴は、一言でいうと「多様性」です。南北に伸びるブーツのような地形であるイタリアは温暖な気候で太陽の光も存分に浴びられるため、全土がワイン造りに適した土地となっています。今から遡ること4,000年以上、紀元前2,000年前からイタリアにはワイン造りの歴史があり、古代ギリシャ人が「エノトリア・テルス(ワインの大地)」と呼ぶほどのワイン造りの理想的な土地でした。そして1861年にイタリア国家が統一されるまで、各地の土壌や料理に合わせて独自にワイン造りが発展してきたことで、イタリアワインの多様性は生まれたのです。
イタリアはワインベルト(ワインの生産に適している地帯)の北緯35度~47度に位置しています。北はアルプス山脈から南はアフリカ大陸近くまで伸びており、冬は寒く夏は適度な湿気があるアルプス気候や、四季のはっきりとした大陸性気候、1年中日射量が多く暑い夏となる地中海性気候など様々な気候があります。北部~中部に位置するミラノやヴェネチア、フィレンツェなどは大陸性気候、南部で地中海に面するナポリやシチリアは地中海性気候となり、それぞれの気候にあったブドウ品種が栽培されています。
D.O.C、D.O.C.G、V.d.Tは共にイタリアワインの格付けの名称です。フランスではAOCとして制定されています。
イタリアワインの格付けが正式に制定されたのは1963年のDOC法が最初であり、実は最近の話なのです。ワイン造りの歴史こそフランスより長いですが、ワインに権威をつけることを行わなかったため、イタリアワインで最高級ワインが誕生するには後発的になったといわれています。
D.O.Cは「統制原産地呼称」といわれ、生産地や品種、収穫量や熟成方法が規定の必要条件を満たしていた場合に格付けされます。一方、D.O.C.Gは「統制保証原産地呼称」といわれ、D.O.Cよりさらに限られたエリアで造られたワインのみ名乗ることができる最上クラスです。申請前にはD.O.Cに最低5年属していなければならず、また収穫量や熟成規定がより厳しい場合があります。現在D.O.C.Gに認定されているワインは74個のみです(2020年5月時点)
この格付けされたワインのエチケットラベルでの表記は、地名での付け方(例:Barolo, Chianti classico)と、品種+di+土地(例:Barbera d’Asti, Brunello di Montalcino)の2通りで表記されます。
V.d.TはVino da Tavolaの略であり、テーブルワインと呼ばれています。最低基準以外の規定はなく、品種、生産地などの表記義務もありません(赤・白などの色の表記のみ)。規定に縛られないことで、高品質のワインが生産されることもあります。
そして2009年からはEUでの新ワイン法が制定され、D.O.C / D.O.C.GはまとめてD.O.P(保護原産地呼称ワイン)に、I.G.TはI.G.P(保護地理表示ワイン)に、V.d.TはVino(地理表示なし)と3カテゴリーで表記されるようになりましたが、従来のD.O.C / D.O.C.Gの表示も認められています。そのため従来の表記と新しいものの両方が混在しているため、まずはD.O.C / D.O.C.GはD.O.Pと把握しておくとわかりやすいです。
ピエモンテ州を代表する黒ブドウ品種です。DOCGに制定されている最高級ワイン、バローロやバルバレスコに使用されています。長期熟成に適しており、ガーネット色をしたその味は豊富なタンニンとしっかりした酸があり、芳醇な香りと相まって高貴な味と表現されます。
イタリアでサンジョヴェーゼ(以下、中部で紹介)の次に多く生産されている土着品種で、ピエモンテ州やロンバルディア州で多く生産されています。特にピエモンテ州のアスティやアルバが盛んであり、その味わいはタンニンが少ないため、色々な品種とのブレンドや樽での熟成や発泡性のものまで、幅広い手法でワインが造られています。
ヴェネト州原産の黒ブドウ品種です。最高級赤ワインのひとつである、ヴァルポリチェッラ地区のアマローネの主要品種となっており、しっかりとした酸味と豊かな果実味から、熟成期間の短いものから長いものまで様々なタイプのもので使用されています。
ヴェネト州の西部、ロミオとジュリエットの舞台でもあるヴェローナの街の東に位置するソアーヴェ地区で多く生産されています。ガルガネガは、しっかり熟成させることで洋ナシやパイナップルのような香りとなり、ふくよかな味わいが堪能できるのも特徴です。またソアーヴェで造られたものは、土壌が火山性と石灰質が混ざったもののため、ミネラル感のあるワインが造られます。
トスカーナ州で生産される黒ブドウの品種です。キャンティワインはサンジョヴェーゼを主体に造られており、スミレの花のような香りにブラックチェリーのような果実味があり、ボディはミディアムで軽い酸味と渋みから、デイリーワインとしても現地で親しまれています。特にフィレンツェの名産品、キアラ牛のTボーンステーキ(ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ)との相性は抜群です。
モンテプルチアーノの名前は、トスカーナ州の同名の街が由来となっています。アブルッツォ州やマルケ州、ウンブリア州などイタリア各地で生産されている黒ブドウ品種であり、D.O.Pワインのモンテプルチアーノ・ダブルッツォ(Montepulciano d’Abruzzo)が有名です。その味わいはサンジョヴェーゼと比べて酸味が少なく、タンニンが多く果実味豊かです。
通称ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノと呼ばれている白ブドウ品種であり、トスカーナ州で主に生産されています。その歴史は13世紀にすでに貴族にも愛飲されていた記録から非常に古いといわれていますが、サンジョヴェーゼなどの赤ワインの台頭や大航海時代以降の新しい食文化の流入から一時生産が衰退していました。しかし1930年から再興を手掛けられ、1993年にD.O.C.Gに認定されるまでの高品質なワインとなったのです。その味わいはフルーティーで華やかな果実味でしっかりとした味わいであり、まるでトスカーナの田園風景を思い起こすような鮮やかな黄金色が特徴的です。
アリアニコはギリシャ原産の黒ブドウ品種であり、南部のカンパーニャ州とバジリカータ州で主に生産されています。火山性地帯で造られることで、酸味とタンニンがしっかりとしたとても力強いワインとなり、南のバローロとも呼ばれる「タウラージ」もアリアニコが80%以上使用されています。
イタリアのかかとと呼ばれるプーリア州で生産される黒ブドウ品種です。原産はギリシャであり、古代ローマ時代から栽培されてきた古代品種です。ネグロアマーロはイタリア語で「黒く苦い」 という意味で、その名の通り黒のような深い色味でほろ苦く、果実味たっぷりの味わいとなります。
シチリア島のワイン造りで最も重要な黒ブドウ品種です。リーズナブルなブレンドワインから単一品種のワインでも造られており、ブレンドではシチリア島名産のマルサラワイン(酒精強化ワイン)でも使用されています。その味わいは、しっかりとした果実味とタンニンに加え、シチリアの太陽を思わせるすっきりとした酸味とミネラル感が特徴的です。
カンパーニャ州で主に生産されるグレコは、ギリシャを意味する名前であり、古代ギリシャから持ち込まれた品種だと言われています。トゥーフォ地区で造られるグレコ・ディ・トゥーフォはカンパーニャ州初のD.O.C.Gワインに認定され、その味わいはヴェスヴィオ火山の熱を感じられるような力強さと酸味、ミネラル感のある辛口白ワインを楽しめます。
シチリア島やカンパーニャ州で造られるフィアーノは、古代ローマ時代から栽培されている古代品種であり、ラテン語ではアピアニスという「ミツバチに愛された」を意味する名前で呼ばれていました。その名の通りハチミツのような香り高いアロマが特徴的で、さらにはナッツやアーモンドの香り、石灰地質のミネラル感と酸味、コクが複雑に織り交ざった味わいを楽しめます。
北はアルプス山脈、南はアドリア海に挟まれた、水の都ヴェネチアが州都のヴェネト州。北風は山脈が防いでくれ、海からの空気が温暖な気候を保ってくれるため、果実味がしっかりした、かつ海のようなすっきりさや酸味を感じさせてくれるようなワインが多いです。
ワイン生産量はイタリアトップであり、赤ワインはヴァルポリチェッラ、白ワインはソアヴェ、スパークリングワインではプロセッコが代表的な銘柄です。イタリア最高級ワインの1つであるアマローネはヴァルポリチェッラ地区で造られています。
ミラノが州都のロンバルディア州では、山岳地帯から平野、丘陵地帯などの地形が揃っているため、シャルドネやピノ・ビアンコ、ピノ・ネーロなど国際品種から、クロアティーナやキアヴェンナスカ(ネッビオーロの別称)などの土着品種まで、様々な品種から幅広い種類のワインが造られています。
イタリアの高級スパークリングワインであるフランチャコルタが有名であり、シャンパーニュと同じトラディショナル方式で造られていますが、シャンパンより安価で高品質な味わいを楽しめることで高い人気となっています。
イタリアのなかでも最北に位置するピエモンテ州は、山の麓を意味する通り、アルプス山脈の南側にも位置する山岳地帯が多いため、夏は暑く冬は寒い大陸性気候です。バローロやバルバレスコなど最高級ワインをはじめ、甘口スパークリングワインのアスティなどの秀逸な単一品種で造られたワインが生み出されています。
またピエモンテ州は美食の街としても有名であり、白トリュフ祭りが行われるのもピエモンテ州のアルバです。そのため、同じ気候風土で採られたトリュフと、そこで造られたワインはまさしくマリアージュした味わいとなります。
イタリア中部に位置し、フィレンツェを州都とするトスカーナ州は、ルネッサンスを起こしたイタリアの歴史的にも重要な文化・芸術の中心地であり、温暖な沿岸部ではオリーブオイルの生産も盛んです。
トスカーナ州のワイン造りの歴史は2,000年にものぼり、有名なキャンティを筆頭に、イタリア三大ワインの一つであるブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、そしてトスカーナワインの革命ともいわれるスーパートスカーナなど、著名的なワインを輩出してきました。
内陸地帯のフィレンツェエリアでは、昔は魚介が中々手に入らなかったため、特に肉料理が盛んでした。日本のように臓物系も食し、また猪やうさぎなどのジビエ料理もよく作られています。そんな郷土料理のお肉と合わせて、土着品種のサンジョヴェーゼで造られた赤ワインをいただくと、この地域の食文化を深く体感できます。
イタリアの最南端にある離島、シチリア島。世界遺産にも登録されている巨大な火山、エトナ山があることから、石灰が多く含まれる土質であり、ミネラル感たっぷり、そして太陽の陽気さを感じられる力強いワインが多くあります。酸味があり軽めのボディであるネロ・ダヴォラが有名ですが、地中海に囲まれた地形から海産物は豊富であるため、海の幸によく合うすっきりとした白ワインも多く生産されています。
また酒精強化ワイン(アルコールが添加された度数の高いワイン)のマルサラが有名であり、辛口から甘口まで異なるタイプがあり、ティラミスなどのデザートにも使用されています。
イタリアワインは地方の色が顕著に現れており、イタリア人らしい陽気な人柄をも感じられるワインが揃っています。ヴェネト、ピエモンテの州都であるヴェネチアやトリノはその街並みのような優雅な気品さ、トスカーナは美しい田園風景、そしてシチリアは輝く太陽のような明るく陽気な人々……。それらを感じられるのがイタリアワインの魅力です。ぜひ現地にいることを想像しながら、イタリアワインを気軽にお楽しみください。ベルトラではワイナリーを訪問する現地オプショナルツアーも用意しています。現地で味わうワインはまた格別です!イタリア旅行の際はぜひ参考にしてみてください。