バンコクから北におよそ700kmの場所に位置するタイのチェンマイ。この地域では、お祭りの時期になると「コムローイ」と呼ばれる天燈上げが行われることで有名です。ディズニー映画のワンシーンのモデルにもなっているため、夜空に広がるランタンの絶景をご存じの方も多いかもしれません。毎年決まった時期に開催されるお祭りは現地の人たちにとって大切な風習で、近年は観光客も多く訪れるようになりました。どのようなお祭りなのか、また撮影のポイント、注意点などについて紹介していきます。
日本でもよく知られている「コムローイ祭り(天燈上げ)」は、チェンマイで開催される仏教のお祭りです。夜空に和紙製のランタン(天燈)を放ち、天にいるブッダに感謝の気持ちを捧げます。オレンジ色に輝くランタンが夜空へ一斉に放たれる光景はとても幻想的で、観光客にも人気です。ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』で、ランタンを上げるシーンのモデルにもなりました。コムローイ祭りはチェンマイで行われていた「サンサーイ」を起源とする祭りで、収穫祭の側面も持ちます。
チェンマイではコムローイ祭りと同じ時期に、「ロイクラトン」と呼ばれるお祭りも開催されます。ロイクラトンも仏教のお祭りで、陰暦の12月、新暦では10月と11月の満月の夜にタイの各地で開催されます。ロイは「川(に流す)」、クラトンは「灯籠」の意味です。その名の通りお祭りでは、川に灯籠を流すのが習わしとされています。地域によって形式が異なりますが、バナナの葉でつくった蓮の花の灯籠の上にろうそくと線香を立てて川に流すのが一般的です。
ロイクラトンは、川の女神である「プラ・メ―・コンカー」に感謝の気持ちを捧げるお祭りで、浄化の意味を持ちます。川辺で行われることから、ロイクラトンは「水の祭典」という別名で呼ばれることも。発祥地はタイ北部にあるスコータイで、ほかの地域よりも規模の大きなロイクラトンが開催されています。
チェンマイのコムローイの開催時期は毎年11月中旬ごろです。直近の開催日は2018年が11月22日、2019年は11月11日でした。基本的には毎年11月に開催されることが決まっていますが、詳細な日程は直前までわかりません。開催日については発表されるのを待ちましょう。
チェンマイではコムローイとともに、ロイクラトンも開催されています。
チェンマイで有名なロイクラトン祭りは、「チェンマイ・イーペン祭り」と呼ばれています。イーペンとは陰暦12月の満月のことです。このイーペン祭りの特徴は、ピン川に浮かぶ無数の灯籠が、天の川のような光景をつくりだすこと。幻想的な美しさにうっとりさせられるでしょう。夜空を見上げればところどころに、地元の人々が上げる天燈の灯りを見ることもできますよ。
チェンマイでは、このイーペン祭り(ロイクラトン)とコムローイ祭りが同時に行われる祭りもあります。それが、古くから地元で親しまれてきた「イーペン・サンサーイ祭り」と観光客向けの「イーペン・ランナー・インターナショナル」です。2013年より2つのイーペン祭りが開催されてきましたが、近年地元民向けのイーペン・サンサーイ祭りは開催が見送られています。
「イーペン・サンサーイ」はローカル向けの無料イベントで、観光客向けのお祭りよりも規模が大きいのが特徴でした。外国人観光客も多く訪れていましたが、宗教的な意味合いが非常に強く、現地では観光客が押し寄せることを好ましく思われていませんでした。それが理由で中止(2019年時点)されているとしたら残念ですね。
一方の「イーペン・ランナー・インターナショナル」は観光客向けの有料イベントで、イーペン・サンサーイを簡略化したものです。会場はメージョー大学から1.5kmほど離れた小さな礼拝所の周辺で、収容人数は5,000人ほど!会場のアナウンスは日本語でも行われているので安心です。事前にチケットを購入しておく必要がありますが、会場が市街地から少し離れた場所にあるため個人での参加には不安を感じる人もいるかもしれません。チケット付きのツアーに参加したほうが確実に会場へ行けるので便利ですよ。
イーペン・ランナー・インターナショナルのメイン会場以外に、「ランナー王朝コムローイ伝承祭り」「イーペン・ランナー・メーリム」「ワットドイティ・イーペン・ランナー」「ドイサケット」「ナワラット橋」などでもコムローイ祭りが開催されています。それぞれに特徴があるので、好きなところに参加するのがおすすめです。
チェンマイの中心地から14kmほど離れた場所で開催されています。2018年に新しく開設された会場ですが、イーペン・ランナー・インターナショナルと同等の約6,000人の来場者数を誇るお祭りです。10,000個以上のランタンが夜空に舞う光景は圧巻。会場では舞踊、伝統工芸技術の実演や販売など文化に触れる機会が多く、屋台でタイグルメも味わえるので、お祭り気分をたっぷりと満喫できますよ。
チェンマイの中心地から15kmほど離れた場所で行われるお祭りで、「チェンマイ・スカイランタン・フェスティバル」とも呼ばれます。会場には提灯がつるされていて、華やかな空気を楽しめます。2017年にできた大きな会場なので、比較的チケットをとりやすいのがメリットです。
チェンマイの中心地から36kmほど離れたドイティ寺院で開催されています。2016年から登場した新しい会場で、「ランタンフェスティバル@ランプーン」とも呼ばれます。この会場の特徴は、寺院にある黄金色のクルーバーシーウィーチャイ像の周りを、オレンジ色のランタンが舞うこと。ほかの会場では見られない光景のため、中心地から離れた会場にもかかわらず、人気があります。
ドイサケットは中心地から35km離れた温泉地にあり、2016年に新たに開設されました。日本からの参加者が多いため、アナウンスや看板には日本語も使用されており、食事も日本人の舌に合う味付けが多いです。「イーペン・イン・ドイサケット」などとも呼ばれます。
唯一チェンマイの市街地で開催されています。無料で誰でも参加することができますが、ほかの会場とは違い厳粛(げんしゅく)な雰囲気はありません。気軽に楽しみたいという人にはぴったりです。
2018年に開設された会場で、「CADコムローイ・ランタンフェスティバル」とも呼ばれます。チェンマイの市街地からは約40分のところにあり、日本の旅行代理店からも申し込むことができます。打ち上げられるコムローイの数は4,000個ほどです。
寺院で行われるコムローイで、少年僧による儀式が無料で見られます。自らランタンを飛ばすことはできませんが、日本の七夕祭りのような雰囲気の会場で、より神聖で幻想的な空気感を味わえます。
基本的に各会場に入るにはチケットが必要です。また会場によって開催日が異なるため、事前に確認することも忘れずに。準備を万全にして、一生の思い出となる光景を楽しんでください。
ランタンは意外と大きく、火をつけてから徐々に膨らみだすので、空へ放つときは2人で手に持つ必要があります。しっかり支えていなければならないため、片手で撮影をすることはできません。せっかくの幻想的な雰囲気を撮影しないのはもったいないので、コンパクト三脚とリモコンを用意しておくのがおすすめ。
コンパクト三脚にカメラを固定してランタンが映るようにしておけば、ランタンが空に放たれる様子を撮影することができますよ。普通の三脚を用意していくと移動の際に邪魔になってしまいますが、コンパクト三脚であれば小さく折り畳めるので便利。ランタンが手から離れれば三脚からカメラを外してもよいですし、スマホで撮影してもよいでしょう。自分たちのランタンが空へ舞い上がっていく様子は思い出に残るので、ぜひ素敵な写真や動画を撮影して旅の思い出にしてください。
華やかで非常に賑わうお祭りですが、いくつか気をつけるべきことがあります。お祭り当日を心から楽しむためにも、注意点を把握しておくことが大切です。
お祭りではありますが、神への信仰を表す仏教儀式であることを忘れないようにしましょう。タイの寺院に入るときに肌を露出した服装では入場できないように、コムローイでも露出度の高い服装では入場できない場合もあります。短パンやタンクトップのように肌を出すものやレギンスのように体のラインがわかるものは避けてください。
コムローイにはたくさんの人が参加するため、大変混雑します。特に女性用トイレは混むので早めにトイレを済ませておいたほうがよいでしょう。セレモニーの開始直前が一番混み合うので、セレモニーが始まる大分前か、始まってから利用するとよいでしょう。
どの会場も市街地から離れた場所にあるため、基本的に周囲は真っ暗。歩道を歩くときに危ないので懐中電灯を持参するようにしましょう。カメラをコンパクト三脚に取り付けるときにも役立ちますよ。手に持つタイプよりも、首にかけられるタイプや頭につけるタイプがおすすめです。
コムローイでは、まるで映画の中にいるような世界観を味わうことができます。とはいえ、各会場が市街地から離れた場所にあるので、個人参加よりもチケット付きのツアーに参加したほうが便利でしょう。ベルトラでは、コムローイを満喫できるガイド付きの現地ツアーも用意しています。送迎もついているので安心ですよ。期間限定のお祭りなので、ぜひ予約して楽しんでください。
※交通機関や施設の料金、時間等は予告なく変更になる場合があります。最新情報は公式サイトも合わせてご確認ください。