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沖縄のマングローブを楽しむ方法|自然と触れ合うカヤック体験

熱帯・亜熱帯地域にしか生息しないマングローブ。群生するその姿は、南国ならではの光景です。ここでは、マングローブを見る前に知りたい基本情報や、沖縄の各エリアの特徴、マングローブをさらに満喫できるアクティビティについて紹介します。

2020/02/18

マングローブとは?

マングローブは、実は特定の植物の固有名詞ではなく、ある条件下に生える植物の総称です。ここでは、マングローブの特徴や日本における生息域など、基本情報を紹介します。

概要・特徴

海水と淡水が混ざり合う水域を「汽水域(きすいいき)」いいますが、この汽水域に生える植物の総称をマングローブといいます。マングローブは主に、赤道付近の熱帯・亜熱帯地域の湿地に生育しており、日本では鹿児島県鹿児島市より南の地域でしか見ることができません。マングローブは、土壌や塩分濃度、気温、冠水時間などの環境条件により種類や大きさが異なります。

マングローブの特徴は複雑な形をしたその「根」にあります。マングローブの種類により、その形も大きく変わり、支柱根(しちゅうこん)、膝根(しっこん)、通気根(つうきこん)、板根(ばんこん)など、それぞれに名前が付けられています。こうしたマングローブの根元にはハゼなどの魚やカニなどの小さな生き物が生息し、それらを捕食する生き物が集まり、マングローブ特有の生態系が生まれます。

海岸沿いのマングローブは高潮から人々を守り、また多くの魚介類が採れる、大事な場所です。また光合成によって二酸化炭素を取り込み、酸素を放出する働きもあります。生態系の維持のために、沖縄を始め、世界各地でマングローブの植林活動や保護活動が行われています。

日本での生育地域

マングローブの日本での具体的な生育地域は、沖縄県西表島、石垣島、宮古島、沖縄本島、鹿児島県の奄美大島、種子島、屋久島などです。

一番マングローブの種類が多いエリアは西表島で、7種類のマングローブが生育しています。次いで石垣島で6種類、宮古島で5種類、沖縄本島で4種類、奄美大島で2種類、種子島と屋久島で1種類のマングローブを見ることができます。

このほか、伊豆半島の南伊豆や九州西部の八代海にも人工的にマングローブが植栽されています。

生育場所

マングローブは潮間帯(ちょうかんたい)に生育しています。潮間帯とは、高潮位(満潮時の水位)には沈み、低潮位(干潮時の水位)には現れる、潮の満ち引きの影響を受ける場所のこと。干潮時には、マングローブは海水に浸かっておらず、陸上の森林のようにみえますが、満潮時には冠水し、海の中に森が生えているように見え、幻想的な光景が広がります。

日本で見られる種類

世界中で100種類近くあるといわれるマングローブ。日本には20~30種類生育しているともいわれていますが、明確に確認されているのは主に7種類です。それぞれの特徴を以下に紹介します。

メヒルギ

寒さに強いことが特徴で、伊豆大島など寒い地方に植栽されています。樹高は低~中サイズで、日本では最大約7~8m程度まで育ちます。「板根」と呼ばれる板状の根をしています。

オヒルギ

メヒルギの次に分布範囲の広いオヒルギ。高木のマングローブで、日本では最大で10m程度まで育ちます。根は逆V字型で、膝を曲げたときの形に似ていることから、「膝根」と呼ばれています。

ヤエヤマヒルギ

沖縄本島を北限とするヤエヤマヒルギ。樹高は最大で10m程度まで伸びる、高木のマングローブです。根は「支柱根」と呼ばれ、タコの足のように細い根が何本も伸びて木を支えています。

ヒルギモドキ

比較的陸に近い場所に生育するヒルギモドキ。本来の樹高は10mほどですが、日本国内では4~5mのものがほとんどです。根はタケノコのように直立していることから「筍根(じゅんこん)」と呼ばれています。また絶滅危惧種に指定されています。

ヒルギダマシ

比較的海に近い場所に生育する植物です。本来の樹高は10mほどですが、日本国内では1~2mの低木がほとんど。根は「筍根」で、細長く弾力性に富んでいます。

マヤプシギ

比較的海に近い場所に生息するハマザクロ科の植物で、樹高は3~5m程度の中木。針山のように地上に突き出る「筍根」が特徴的です。

ニッパヤシ

特別天然記念物に指定されているニッパヤシ。陸に近い場所に生息するマングローブで、日本では西表島以南にのみ分布しています。樹高は約2~4mと低め。幹がなく、地中内から伸びた「根茎(こんけい)」の先に葉をつけます。また半透明の果実はナタデココのような食感で美味。

沖縄でマングローブが見られるエリア

Photo by シーラバーズ 沖縄

日本に生育する全7種類のマングローブを見られる西表島をはじめ、沖縄県はマングローブの宝庫です。各エリアそれぞれの特徴を紹介します。

沖縄本島

沖縄本島でマングローブが見られるエリアは、北部エリアのやんばる(山や自然が多く残る場所)が主流。大きく分けて億首(おくくび)、比謝(ひじゃ)、慶佐次(けさじ)の3つのエリアで見ることができます。エリアそれぞれに特徴があり、体験できることも異なります。

億首川流域

億首川は沖縄本島北部、東海岸に位置しています。このエリアで見られるマングローブの種類は、メヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ヒルギモドキの4種類。マングローブの規模は慶佐次エリアほどではありませんが、生息する生き物が多く、バードウォッチングの名所としても人気の場所です。多くの観光地を有する恩納村から、車で30分ほどの距離にあるので、ほかの観光地も楽しみたい方にピッタリのスポット。サンセットが美しい「万座毛」や有名なダイビングスポット「青の洞窟」などの観光と、セットで訪れることも可能です。

比謝川流域

比謝川は沖縄本島中部の西海岸に位置します。このエリアの特徴はアクセスのよさ。那覇空港がある南部からは車で約1時間、美ら海水族館がある中北部からも行きやすい場所にあります。流域面積では沖縄本島最大規模で、場所によっては遊歩道もあり、マングローブを観察しながら散策できます。またマングローブ林をカヤックで楽しむアクティビティも人気です。

慶佐次川流域

慶佐次川は沖縄本島の北部東海岸に位置しています。このエリアの特徴は、国の天然記念物に指定されるほどの自然の豊かさ。マングローブの生育状況は本島最大規模で、川幅も広く、壮大な自然が広がっています。干満の差が大きく、それ故に豊かな生態系が築かれています。一方アクセス面では、リゾートホテルや観光地が多い西海岸とは反対の東海岸に位置するため、やや不便といえます。

離島

沖縄県の離島、特に西表島と石垣島には、沖縄本島よりもさらに多くのマングローブが生息しています。手つかずの自然がどこまでも広がるマングローブ林をカヌーで探検すれば、爽快な気分を味わえるはず。

西表島

日本で一番多い7種類のマングローブが生育している西表島。マングローブが見られるエリアでおすすめは仲良川(なーらがわ)流域です。天然記念物であるイリオモテヤマネコや、マングローブ林ならではのサガリバナなどの貴重な動植物が多く生息しており、亜熱帯の大自然を満喫できます。上流には滝もあり、トレッキングスポットとしても人気です。

宮古島

宮古島で最大のマングローブ群生地である島尻マングローブ林。ここでは、宮古島で生育している5種類のマングローブが確認されています。遊歩道が完備されており、ハゼやカニなどマングローブに生息する生き物を観察しながら散策が可能です。

石垣島

西表島に次いで多い、6種類のマングローブが生育する石垣島。なかでも有名なスポットは、天然記念物にも指定されている宮良川(みやらがわ)のヒルギ林と、吹通川(ふきとうがわ)のヒルギ群落です。どちらの川にもヒルギ系のマングローブが多く生息するため、そう呼ばれています。宮良川は石垣島でも最大級の河川。空港からも近く、アクセスも良好です。一方の吹通川は北部に位置します。市街地からは離れているものの、その分雄大な自然が広がり、秘境の趣を楽しめます。

マングローブを楽しむアクティビティ

マングローブをより楽しみたいのであれば、周りを散策するだけでなく、カヤックやカヌー、SUPでクルーズにでかけましょう。沖縄には、マングローブ林を進むカヤック・カヌー、SUPのアクティビティが豊富にあります。気をつけたいのは集合時間。マングローブのアクティビティは潮の干満に合わせて始まることが多いため、毎日開始時間が異なります。あらかじめ確認しておきましょう。

カヤック

マングローブを楽しむアクティビティといえば、やはりカヤック(カヌー)。カヤックに乗って、ジャングルのように生い茂るマングローブ林をゆっくりと探検すれば、マングローブはもちろん、マングローブ林に生息する亜熱帯の生き物に出会えます。大人から子供まで楽しめるのもよいポイント。

マングローブでカヤック体験をするなら、ツアーへの参加がオススメです。参加者が集合して漕ぎ方講習などを受けたら、いよいよ探検に出発。短時間のプランは所要時間2時間から2時間半ほどで、マングローブ林を十分に満喫できます。干潟に降り立って散策やトレッキングを楽しむコースもありますよ。

SUP

SUPとは、「Stand Up Paddleboard」のこと。その名の通り、SUP専用のボードの上に立ち、パドルを使って進んでいくマリンスポーツです。サーフィンボードよりも安定感がよく浮力も高いため、初心者でも比較的簡単にボード上に立つことができます。

このSUPに乗ってマングローブの森をクルーズするツアーも人気です。立ったまま進んでいくため、カヤックやカヌーとはまた違った高い視線からのマングローブ林を楽しめますよ。

オプショナルツアー参加で、マングローブを満喫しよう

マングローブをより深く楽しむならば、カヤックやSUPなどのアクティビティに挑戦するのがおすすめ。マングローブやそこに暮らす生き物たちを、より間近に観察できます。マングローブカヤック・SUPは潮の満ち引きに大きく影響を受けるため、アクティビティは信頼のおけるオプショナルツアーを利用すると安心です。ベルトラでもマングローブクルーズ付きのツアーを豊富に揃えているので、チェックしてみてくださいね。

※交通機関や施設の料金、時間等は予告なく変更になる場合があります。最新情報は公式サイトも合わせてご確認ください。

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