フィレンツェから1時間ほどで行くことができる「ピサの斜塔」。イタリア中部、トスカーナ州のピサ市にある大聖堂(ドゥオーモ)の鐘楼で、「傾いている建物」としてイタリア旅行で定番の撮影スポットとなっています。ここでは、ピサの斜塔のアクセス方法や歴史、周辺の観光スポットやレストランをまとめて紹介します。
ピサの斜塔【Torre di Pisa】がある都市ピサは、紀元前から長きにわたってローマ帝国の「海軍基地」として機能していました。11世紀ごろからジェノヴァやベネチアと並ぶ地中海の貿易国の1つとなりますが、15世紀初頭にフィレンツェ共和国に占領されることとなります。街を代表する世界遺産は、ピサ大聖堂(ドゥオーモ)、斜塔(鐘楼)、洗礼堂(バッティステロ)、納骨堂(カンポサント)が集まるピサのドゥオーモ広場(ドゥオモ広場)【Piazza del Duomo a Pisa】。「奇跡の広場」という意味を持つピアッツァ・デイ・ミラーコリ【Piazza dei Miracoli】とも表記され、1987年に文化遺産として登録されました。
ピサを語るうえで欠かせないのが、科学者ガリレオ・ガリレイの生誕地であるということ。旧市街にはガリレオが住んでいたとされる家もあり、ピサの華々しい歴史を物語る中世の建物が並びます。ピサの斜塔は、ガリレオが物体の落下速度に関する実験を行った場所としても有名です。彼は大小2つの玉を塔の上から落とし、質量に関わらず物体の落下速度が一定であることを明らかにしました。
ピサ中央駅から「ピサのドゥオーモ広場」までは、ラムロッサ【LAM rossa】路線のバスに乗るルートが一般的です。チケットは、駅構内にあるタバコや雑貨が売られているタバッキ【TABACCHI】でも購入できます。10分ほど乗り、トッレ【Torre1】で降りて5分ほど歩けば広場に到着。中央駅から歩く場合は25分ほどかかりますが、途中でアルノ川を渡る道もあるので、天気のいい日などは徒歩もおすすめです。 ピサ空港からは、ピサの斜塔に直行する路線バスで行くことができます。空港発のピサムーバー【Pisamover】というモノレールもおすすめで、市内まで約5分、片道2.7ユーロ(325円)ほどです。
■ フィレンツェから
車であれば1時間15分ほど、フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ駅(S.M.N駅)からリヴォルノまたはピサ方面行きの快速電車に乗れば、最短1時間弱でピサの街に着きます。特急と高速鉄道は停車しないので注意しましょう。
■ ローマから
電車移動であれば、高速列車のフレッチャビアンカを利用してローマ・テルミニ駅からピサ中央駅まで約2時間半、片道1,250円ほどの値段で行くことができます。イタロなどでローマからフィレンツェに向かい、滞在してからピサに行く人も多くいます。 飛行機であれば、ローマのフィウミチーノ空港からピサ空港(ガリレオ・ガリレイ国際空港、PSA)まで直行便があり、所要時間は1時間弱です。最短ルートであれば100ユーロ(12,000円)ほどかかります。
■ ミラノから
電車移動であれば、フレッチャビアンカを利用してミラノ中央駅からピサ中央駅まで約4時間かかります。料金の目安は片道38ユーロ(4,580円)ほどです。飛行機は直行便がなく、ローマなどを経由して最短3時間半。最短ルートで行こうとすると40,000円ほどかかる場合があります。
外から眺めるだけであれば無料ですが、傾きを体感でき、頂上から街の景色を楽しめるので、入場して塔を登る価値が大いにあります。入場料は18ユーロ(約2,166円)で、入場制限があるので事前にチケットを購入しておくのがおすすめ。斜塔と聖堂の間にチケット売り場があるので、現地で買う場合はこちらに寄りましょう。洗礼堂、カンポサント(納骨堂)、ドゥオーモ付属博物館、シノピエ美術館など、付近のスポットに入ることができる共通チケットもこの売り場で販売しています。
時期やその年によって異なりますが、だいたいの期間と時間の目安は下記の通りです。訪れる前に、公式サイトで時間をチェックしておくのが確実でしょう。
4月:9時~22時
5月~6月:9時~20時
7月~8月:8時30分~22時
9月~11月:9時~20時
年末年始:9時~20時
12月〜3月:9時~19時
ピサの斜塔のみであれば45分ほどですが、混雑が予想されるので時間に余裕を持って観光しましょう。洗礼堂と大聖堂も合わせて見学する人がほとんどで、1時間半~2時間あれば十分満喫できます。フィレンツェ滞在に半日加えて行くことができるので、送迎付きの現地オプショナルツアーも多くあります。
美しい円筒形の斜塔は、1173年に着工して塔の基礎部分が造られ、1372年に完成しました。建てられた当時から地盤沈下によって傾き始めており、傾いた状態で上階の工事を再開したといわれています。一時倒壊の恐れがあるとされ、1990年から2001年まで改修工事を実施。約10年の工期を経て、傾斜角度を3.99度に修正しました。円筒の直径(外径)は約15メートルあり、内部を空洞にすることで重心を調整できる設計に。塔の高さは58.36メートルですが、傾いているので塔の北側と南側で70センチメートルほどの差があるのも特徴です。長きにわたり建築家や専門家の調査対象とされ、話題となった背景もあり、イタリア屈指のフォトスポット、観光名所として多くの観光客でにぎわっています。
2020年3月5日時点の傾斜角度は約5.5度で、4年前の2016年は約3.9度。改修工事によって改善され、2018年11月21日には、ピサ大学の専門家が塔の傾きが垂直線に4センチメートル程度改善されたことを報告しましたが、また傾斜が進行したことがわかります。最新の傾斜角度は公式サイトで確認できるので、チェックしてみてください。
フォトスポットとしても人気の斜塔。ここでは、知っておきたい撮影スポットとトリック写真のパターンを紹介します。
広場は1日中観光客が行き交うので、なかなか自由に思い通りの場所で撮ることは難しいかもしれません。人が多すぎないときは塔の前の芝生で撮影しても問題ないでしょう。 おすすめのスポットとして、バス停から塔を過ぎてしばらく歩いたところに、ロッカーが設置されているオレンジ色の建物があります。建物の前も芝生になっていて、バス停方面の広場よりは人が多すぎず、比較的見通しがいいです。中央に斜塔、すぐ右手にドゥオーモ、その右横にオレンジ色の建物が見えるポイントがあるので、距離や画角を調整して撮影してみてください。 トリック写真を撮るなら塔だけが映っていた方がいいかもしれませんが、隣のドゥオーモを入れた写真も撮っておくと、塔の傾きやサイズがわかりやすいことも。さまざまな画角を試して、思い出に残る写真をたくさん撮っておきましょう。
せっかく来たなら、傾きや遠近法を活かしたおもしろ写真を撮りたいですよね。よく知られているのは、手で斜塔を支えるポーズ。足を踏ん張って大変そうな表情を見せると、より背景と人物がマッチした仕上がりになります。同じ「支える」でも、芝生に寝そべって足だけ塔にくっつけてみたり、体育座りをして背中を塔に近づけたりすると、くつろぎながら偶然を装って塔を支えているように見え、また違った印象に。 他に、塔を抱きしめたり地面から引き抜こうとするポーズも人気です。シャッターの直前にジャンプしてキックやパンチをしているように見せるなど、アクロバティックな写真を撮る人もいます。ポップでかわいらしい印象を出すなら、ソフトクリームのコーンを塔の下に掲げたり、頂上に食べ物を乗せるような仕草をしたりするのもおすすめ。マナーを守り、周りの人や物に注意して、思い思いの写真撮影を楽しんでください。
入場制限がかかるほど人気の斜塔。公式サイトによると階段は273段あり、塔の頂上のテラスからは広場を見渡すことができ、遠くに広がるピサの街を一望できます。人混みで歩きづらく、螺旋状の階段なので上がっている間に気分が悪くなる場合があります。登る場合は万全の体調で臨み、混んでいる時間帯は避けるようにしましょう。
傾きと人混みで足元が不安定なうえ、大理石がすり減って滑りやすい場所もあり、階段を上がるスピードが遅いと後ろの人にも迷惑がかかってしまいます。ヒールのある靴やサンダルなどは避け、スニーカーなどの歩きやすい靴を履きましょう。
荷物にも制限があるので注意が必要です。塔内はビデオやカメラ以外は持ち込めないので、斜塔と聖堂の間にあるチケット売り場隣、またはオレンジ色の建物のロッカーに預けましょう。混み合うので、大きい荷物は中央駅の荷物預かり所を利用するのもおすすめです。
1068年に着工し、50年ほどかけて造られたピサ・ロマネスク様式を代表する聖堂。緑の芝生風景に映える輝かしい白色の大理石が特徴です。イタリア・ロマネスク彫刻の最高傑作ともいわれる正面入口のボナンノ・ピサーノの扉も必見で、4層の柱列が積み重なり、統一感のあるファサード(正面外観)となっています。
12世紀半ばに建てられ、14世紀に完成したロマネスク様式の代表的な建造物で、「美しい宝石箱」ともいわれています。内部にはお風呂のような大きな洗礼槽があり、ここで浸礼がされていました。ピサで活躍していた彫刻家ニコラ・ピサーノによって造られた説教壇プルピト【Pulpito】も見どころの1つです。堂内の音響効果も特徴で、およそ30分~1時間ごとに係員がデモンストレーションの案内をしてくれ、歌ったり手を叩いたりして音の反響を実演してくれることがあります。
1343年に創立された、イタリアを代表する国立大学の1つ。アルノ川沿いに位置し、ピサの斜塔から歩いて15分弱の距離にあります。数学と科学の分野が特に有名で、ガリレオ・ガリレイが生徒として学び、数学の教授として在籍していたことでも知られています。大学から徒歩8分ほどのところにある付属の「ピサ植物園」は、医学教育として建てられた世界最初の大学植物園でもあります。
せっかくピサに訪れたならレストランもおさえておきたいところ。手軽に食べられるランチ、地元の人に親しまれているおすすめのお店を紹介します。
ランチにおすすめの、ピサの斜塔から徒歩10分、サン・フレディアーノ教会と広場の間に位置するワインバー。生ハムやサラミ、チーズの盛り合わせが好評で、イタリアならではのパニーノ(パンで具をはさんだ軽食)も人気です。店内はコンパクトで、地元の人と観光客で混むことが多いので、テイクアウトしてすぐ近くの広場で食べても◎。
ピサの斜塔から徒歩10分、サン・フレディアーノ教会と広場の間に位置するワインバー I PORCI COMODI, Pisa. 3.2K likes. Vini & Panini Speciali…
ピサの斜塔から歩いて15分、ピサ大学から5分強で行けるシーフードレストラン。アルノ川に近いベッレ・トッリ通り沿い、ヴィンクリス・サン・ピエトロ教会の裏側にあり、地元の人も多く訪れます。手頃な価格でトスカーナ料理を味わうことができ、ワインもおいしいと評判です。グルテンフリーやベジタリアンメニューもあります。
ピサの斜塔から歩いて15分、ピサ大学から5分強で行けるシーフードレストラン Situato nel cuore del centro storico di Pisa, il ristorante …
「イタリアといえば」といわれて候補にあがる、美しくもユニークなピサの斜塔の風景。せっかく行くなら、斜塔だけでなく周辺のスポットやピサの街も観光しましょう。フィレンツェやローマから日帰りで行けるので、スケジュールに組み込みやすいのも嬉しいポイント。ベルトラでは入場付きの半日ツアー、列車代込みのツアー、近郊の世界遺産シエナやサン・ジミニャーノに立ち寄るツアーを選べます。当日になって移動や観光ルートに迷うことがないよう、現地オプショナルツアーを活用してより充実したイタリア旅行を楽しんでください。
※1ユーロ=約120.36円(2020年2月4日時点)
※交通機関や施設の料金、時間等は予告なく変更になる場合があります。最新情報は公式サイトも合わせてご確認ください。