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山梨ワインの基礎徹底ガイド|主な産地や日本固有のブドウ品種を紹介!

日本ワイン発祥の地、山梨県。全国でもっとも多い80以上のワイナリー(※)が集まる山梨県のワイン造りは、今からおよそ150年前の明治初期に始まりました。日本を代表するブドウ品種の「甲州」や「マスカット・ベリーA」をはじめ、近年では国際品種の栽培も行われています。

2019年には「ワイン県やまなし」が宣言され、ますます盛り上がる山梨ワイン。気候特性やブドウ品種、そして主な産地について詳しく紹介します。

※2020年7月時点

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2020/06/23

山梨ワインの基礎知識

山梨ワインの主な産地

日本屈指のワイナリーが集まる山梨県では、甲府盆地の主に4つのエリアでワインが生産されています。

まず1つ目は、銘醸地勝沼を中心とする東部エリア。およそ60ものワイナリーが集まる県内最大のワイン産地です。2つ目は甲府市を中心とする中央部エリア。ワイン産地としては珍しく盆地の底に位置しています。3つ目は北杜市、韮崎市から成る北西部エリア。新しいブドウ畑が開拓されている近年注目のエリアです。最後4つ目は、南アルプス市を中心とする西部エリア。年間降雨量が少ない気候を活かしてワインが造られています。

山梨ワインの特徴

山梨ワインをマスターする上で知っておきたい、気候特性と地理的表示制度について見ていきましょう。

■気候特性

ワイン造りが盛んな甲府盆地の気候は、エリアによって異なります。東部エリアでは、メインとなる勝沼地区が標高300m〜600m前後の場所に位置しており、日照時間も長いことからブドウの栽培に適しています。中央部エリアは甲府盆地の底に位置しており、気温が比較的高いことから他のエリアよりも早めにブドウの収穫が行われています。北西部エリアは盆地を囲む八ヶ岳山麓にもブドウ畑があり、冷涼な山岳気候が特徴的です。西部エリアは年間降雨量が少なく、昼夜の寒暖差が大きいことが特徴です。

■地理的表示制度(GI)

地理的表示制度(GI)とは、その土地の生産物を財産とし、産地の表示を法的に認めることです。2013年7月、ワインでは日本で初めて「山梨」が地理的表示として国税庁に認められたことにより、ラベルに記載された原産地とその品質が保証されています。ラベルへの表示基準は厳しく、山梨県産のブドウを100%使用していることはもちろん、指定されたブドウ品種のみを使用していること、県内で醸造していることといった細かな条件をクリアしたワインのみが、「山梨」の表示を認められています。

長らくテーブルワインと認知されていた日本のワインですが、山梨がGIとして認められたことにより、世界的にその魅力が知られるきっかけとなりました。

山梨ワインの有名なブドウ品種

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甲州

日本を代表する白ブドウ品種。分厚い皮を持ち、淡いピンク色が特徴的です。醸造の方法は多岐にわたっており、「シュール・リー(発酵中に発生した澱を取り除かずに熟成させる製法)」で造られるスッキリとした辛口の白ワインが主流であるほか、近年ではスパークリングワインの醸造も行われています。夏みかんなどの和柑橘や日本酒といった”和”を思わせる味わいがあり、刺身や煮物など、繊細な味付けの和食にぴったりの白ワインに仕上がります。

マスカット・ベリーA

“日本ワインの父”とも呼ばれる川上善兵衛によって開発された黒ブドウ品種。ブドウは濃い紫色ですが皮が薄く、明るい色味の赤ワインに仕上がります。ストロベリーの果実味や甘いキャンディを思わせる風味があり、タンニン(渋み)が少ないのが特徴的です。軽やかな味わいのため、タレを絡めた焼き鳥や、醤油を使った和食によく合います。

デラウェア

アメリカを原産地とする、生食用としても馴染み深い白ブドウ品種。小粒サイズで赤紫色をしており、多くは甘口のフルーティーな白ワインへと醸造されます。近年ではシャンパンと同じ瓶内ニ次発酵で造られたスパークリングワインも人気を集めており、甘口~辛口までラインナップもさまざま。魚介類を主とした和食に合わせて楽しむのがおすすめです。

カベルネ・ソーヴィニヨン

フランス・ボルドー地方を原産地とするカベルネ・ソーヴィニヨンは、世界でもっとも広く栽培される黒ブドウ品種。黒っぽい小粒サイズのブドウが持つ分厚い皮と大きな種からは豊かなタンニンが生まれ、長期熟成に適しています。山梨県では、日本固有の黒ブドウ品種であるマスカット・ベリーAとブレンドしたワインも生産されています。

山梨ワインの代表的産地の特徴

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甲府盆地 東部

山梨県を代表するワイン産地のひとつ、勝沼地区がある東部エリア。甲州市、山梨市、笛吹市、大月市から成るこのエリアには水はけのよい土壌が広がっており、主に甲州やマスカット・ベリーAを使ってワインが造られています。県内でもっとも多い約60軒のワイナリーが集まっており、明治24年創業で現存する日本最古のワイナリー「まるき葡萄酒」やかつての宮内庁御用達ワイナリー「ルミエール」、大手ワインメーカー「シャトー・メルシャン」などがあります。

また塩山地区の奥野田は日本で最初にデラウェアが栽培された産地であることから、今なおデラウェアの栽培がさかんに行われています。

甲府盆地 中央部

甲府市を中心とする中央部エリア。一年の平均気温が高く盆地の底に位置していることから、比較的水はけのよい場所を選んでブドウの栽培が行われています。日本固有のブドウ品種に加え県内に先駆けて国際品種のカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に注力したワイナリー「サドヤ」をはじめ、計4軒のワイナリーが点在しています。

甲府盆地 北西部

北杜市、韮崎市から成る北西部エリア。日本固有のブドウ品種、甲州の垣根栽培が初めて本格的に取り組まれ、近年は国際品種のメルロやカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネといったブドウの栽培も行われています。山梨ワインを牽引してきた「中央葡萄酒(グレイスワイン)」のほか、2000年代以降は新しい畑が次々と開拓され、今ではブドウ栽培からワイン醸造までを一貫して担うワイナリーも増えています。

甲府盆地 西部

南アルプス市を中心とする西部エリア。年間降雨量が少なく、昼夜の寒暖差が大きい盆地らしい気候が特徴的です。日本固有のブドウ品種、マスカット・ベリーAを中心とした赤ワインのみを醸造する「ドメーヌ・ヒデ」がこのエリアにワイナリーを構えています。

ますます高まるブランド力!和食によく合う山梨ワイン

日本で初めて地理的表示が認められた山梨ワイン。県内では、和食とともに楽しみたい上質なワインが数多く造られています。山梨県へ訪れる際は、ぜひワイナリー見学やワインテイスティングを予約して、お好みの山梨ワインを見つけてみてはいかがでしょうか?

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